<報告>2/8 シンポジウム:企業の再エネ選択と電力会社

<報告概要>

2018/02/08(木)シンポジウム「企業の再エネ選択と電力会社」 概要報告

とき:2018/02/07(木)14 :30〜17 :30

ところ:東京ウィメンズプラザ・ホール

参加者:100名程度

 

プログラムと配布資料はこちら

1.世界の流れ、再エネ 100%を目指す動き

  • 古屋将太さん(自然エネルギー100%プラットフォーム/環境エネルギー政策研究所)
世界全体では、自然エネルギー、特に太陽光発電の設置が急速に拡大、またコストも低下している。その状況の中で、2014年にはパリ協定の原動力にもなった「自然エネルギー100%プラットフォーム」が設立されたり、自社の活動およびサプライチェーンの電力利用を自然エネルギー100%に転換する目標を設定し、実行をめざす「RE100」という企業のイニシアチブが発足したりしている。RE100に参加しているのはグローバル企業が中心ですが、日本からは2017年、株式会社リコー、積水ハウス株式会社、アスクル株式会社の3社が参加した。また、日本でも2017年9月より「自然エネルギー100%プラットフォーム(http://go100re.jp)」の活動がスタートし、具体的な事例として、千葉商科大学が自然エネルギー100%大学を宣言している。

こうした取り組みが今後どのように日本の企業や自治体等を変えていくのか、注目したい。

 

2.再エネ 100%供給をめざす電力会社

及川 斉志さん(太陽ガス)

 

 

 

 

鈴木 章浩さん(エネックス株式会社)

 

 

 

 

真野 秀太さん(みんな電力)

 

 

 

 

石原 敦夫さん(日本エコシステム)

 

 

 

 

津崎 荘平さん(ネクストエナジー・アンド・リソース)

 

 

 

 

竹村 英明さん(グリーンピープルズパワー)

 

 

 

 

滝井 慎吾さん(湘南電力)

 

 

 

 

進行:金子貴代(グリーン購入ネットワーク)

吉田明子(パワーシフト・キャンペーン)

 

<各電力会社から事業紹介>

  • 日本エコシステム

・20年前から戸建て住宅にお住まいの方に太陽光発電システムの販売・施工を行っている。

・その太陽光発電システムを活用した電力小売り事業「じぶん電力」を展開。

・日本エコシステム所有の太陽光発電を各家庭の屋根に設置し、そこから電力供給。

・余剰電力は日本エコシステムがFIT制度を利用して売電。

・CO2排出ゼロのクリーンな電気を使った「地球応援プラン」がある。

 

  • ネクストエナジー・アンド・リソース

・「GREENaでんき」。

・本社は長野県駒ケ根市で自然エネルギーの普及に関わる事業のみを実施。

・高圧/低圧ともに扱っている。

・東京電力、中部電力、関西電力管内にて供給、2018年3月からは東北電力管内も。

・再エネ由来のJクレジット使用によりCO2ゼロ電力を供給。

・さらに自然エネルギー100%電力プラン「GREENa 100プラン」がある。

・マイページにてCO2削減量やグリーン電力証書を見ることができる。

 

  • みんな電力

・誰が生産したのか分かる「顔の見える野菜」のように、電源の生産者を明示した「顔の見える電気」をすすめる

・ホームページ上に、写真付きで各発電所を紹介

・地域や自治体、企業とコラボした発電所

・電力購入者が応援したい発電所を選べるようにしている

・FITの再エネ比率が高い

・RE100への参加を検討する企業向けのプランも用意している。

 

  • 湘南電力

・本社は神奈川県小田原市にあり、神奈川県内で供給している。

・小田原市外に流出している電気代を地元に留まらせ、地域貢献したいという想いでやっている。

・湘南ベルマーレ等、地元企業と連携。

・湘南地域でつくられたクリーンな電気を、送電ロスの少ない地域内で使用。

・地産電源比率は、ありがたいことにお客さんが増えたことで少し下がったが今後増やしていきたい。・地元の自治体や公共施設(小中学校等)にも供給。

 

  • 太陽ガス

・鹿児島のLPガス販売会社

・「お客様に愛される地域に根差した持続可能なエネルギー会社」をめざす

・「Happy Energy」を代理店として、関東、近畿でも展開している。

・市民共同発電所から電気を調達。

・鹿児島県内に小水力発電所も建設中。

 

  • エネックス株式会社

・従来のLPガス供給事業に加え、電力も供給

・多摩地域、埼玉地域が中心

・エネルギーの「地産地消」を進める

・家庭や地域の小規模太陽光発電を主に調達。

・それぞれの太陽光発電に愛称をつけてホームページ上で公開している。

 

  • グリーンピープルズパワー

・2017年2月に設立したばかりの会社。

・1年間で21回の電気の相談会を実施し様々な声を聞いてきた。

・親会社である「イージーパワー株式会社」という再エネ発電会社で、太陽光等の設置も行っている。

・家庭の太陽光の余剰電力など、FITではない再エネからの電源調達を重視していく。

 

<パネルディスカッション>

  • 家庭向け電力の小売りについて、どのようにPRや営業をしているのか。

日本エコシステムからは、一般家庭などの屋根を借りて太陽光発電を設置する「第三者所有モデル」を顧客に説明するのが難しいという話が出た。エネックスからは、地域で営業をしているが、電力会社を変えることそのものに抵抗がある方がまだ多いという声が上がった。

一方、太陽ガスの代理店の「Happy Energy」は、東京地域の方々への貢献として、子ども食堂を開催したりしている。

 

  • 企業向け電力の小売りについて

はじめに、モデレーターの金子貴代(グリーン購入ネットワーク)から、企業を動かす3つのキーワードとして、「ESG投資」「パリ協定」「東京五輪」をあげた。現在、開催されている平昌五輪は、自然エネルギー100%を掲げて開催するはじめてのオリンピック。しかし、その公式スポンサー企業であるサムスンは、自然エネルギーからの電力をほとんど調達していない。これに対し、グリーンピースが自然エネルギー100%調達をするようキャンペーンを行っている。2020年の東京五輪を控えた日本の企業にも、世界から厳しい視線が向けられるのではないか、と指摘した。

ネクストエナジー・アンド・リソースは、高圧の電力販売も行っており、ここ最近、ESG投資、RE100に関連した相談として大手企業や自治体から問い合わせがあるとのこと。Appleの店舗などに電力供給をしているみんな電力からは、企業が切り替えるとなるとやはり価格が重要になってくるが、再エネ100%を視野に入れる企業もあるとのこと。

湘南電力は、地元企業を中心に営業を行っている。

 

  • 電源調達について

電源調達に関しては、持続的な電源の調達、自社電源の確保、2019年に家庭用太陽光の最初のFIT買取期間が終了すること等についての意見が出た。各社とも、自然エネルギーを調達したいという思いはあるものの、電源を継続的に確保し調達することの難しさや、経営の問題(キャッシュフローが悪い、長期の契約が少ない)に直面しているようだ。また、送電線の空き容量問題など、再エネの普及を阻まれているという現状もあり、課題がまだまだ多いことが確認された。

一方で、消費者が変われば社会を変えることができる、つまり、多くの消費者が再エネを選択すれば、再エネを普及する社会の仕組みを作らざるを得なくなるという意見も出た。

 

  • 地域とのかかわりについて

地域とのかかわりを重視している、湘南電力、太陽ガス、みんな電気から意見が出ました。地元の企業や自治体との連携、公共施設への電力供給といった取り組みのほか、みんな電力からは母校で発電した電気を卒業生が買って応援する「学校応援でんき」という取り組みが紹介された。

 

  • 最後に、今後のビジョンについて

・日本エコシステム:電力切り替えしてもらうよう、人々の背中を押さないといけない。まずは企業、そして個人に働きかける必要がある。

・ネクストエナジー・アンド・リソース:自然エネルギー事業500GWをつくっていくというのが会社のビジョン。再エネが環境だけでなく経済的メリットもあると知ってもらい合理的に選んでもらうことが重要。

・みんな電力:消費者が電気を選ぶことがとても重要。たとえば、田舎のおばあちゃんが作った電気を孫が使うようなことを実現したい。

・湘南電力:地域密着、地産地消をめざす。まだまだこれからなので、地道に活動していきたい。

・太陽ガス:自分の子供に胸を張って言えるようなもの、しあわせになる社会を作っていきたい。地産地消の電気をめざす。再エネ100%は世界の潮流だ。

・エネックス:市民電力の皆さんと協力して、再エネを増やしていきたい。

・グリーンピープルズパワー:需要側も供給側も低圧施設をたくさん増やしていきたい。まずは100件、次は1000件(10MW)と、徐々に拡大していきたい。

 

3.わが社の選択!パワーシフトした企業・事業所の事例紹介

  • 照井敬子さん(薬樹株式会社/NPO 法人 Liko-net 理事長)

企業理念は、薬を提供することを目的とする“くすり屋”ではなく、“健康屋”をめざしている。必要以上に薬に頼ることなく、健康に暮らせるようなサポートをしている。「人・社会・地球の健康」を掲げ、店頭で、使用済み天ぷら油や古着の回収も行っている。特例子会社では障がい者の従業員が個性を活かして働き、自社店舗の白衣や地域のゆるキャラ(!)のクリーニングなどを行っている。

薬樹株式会社は、2017年9月より「みんな電力」に電力切り替えを開始し、12月末に106の事業所の切り替えが完了した。しかし実はそう簡単はなことではなかった。上層部の理解促進や社内の調整等を何か月にもわたって行い、やっと実現した。その際に、パタゴニアのイヴォン・シュイナードさんの「問題の原因になるか、解決策の一部になるか」という言葉を思い出し、意識して伝えた。

 

  • 鬼沢真之さん(学校法人自由の森学園 理事長)

自由の森学園は、埼玉県飯能市にある、独自の理念で教育を行なう学校だ。生徒の個性を大事にする教育を行っており、美術や音楽などの芸術の授業に力を入れ、100講座を超える自由選択授業がある。その中には、環境問題やエネルギー問題について考える講座や、地元の産業である林業を学ぶ講座もある。

2014年に一度学校の電気を切り替えたが、その電力会社の事業所向けのプランが終わってしまい、どうしようかと考えていたところ、パワーシフト・キャンペーンに連絡をして、いくつか事業所向けのプランがある電力会社を紹介してもらった。その中で、電力がどこから、どのように作られているのかが目に見えてわかりやすく、自由の森学園の教育の考え方とマッチするということから、2016年に「みんな電力」に切り替えた。学校の省エネにも積極的に取り組み、省エネ型エアコンやLED照明に変え、電力ピーク時には不要な電気を使わないよう自ら校内放送もしている。現在は、他の学校の校長先生たちにも電力切り替えをするように声をかけている。

誰かの犠牲の上にあるエネルギーではなく、誰もが幸せになれるエネルギーを選ぶ。これは教育の問題だ。自分の使っているものがどこから、どのように生産されるのかは、考える材料になる。

 

  • 吉田明子(パワーシフト事務局/FoE Japan)

パワーシフト・キャンペーンは、再エネを重視する電力会社を消費者に紹介し、再エネによる電力供給が促進されるように国の政策に働きかける取り組みである。

電力自由化によって、消費者が再エネを重視する企業を選べるようになった一方、安さが求められてしまうという負の側面もある。実際に現在、石炭火力発電の新規建設や、原発再稼働を推進する動きがあり、このような方向は再生可能エネルギーを促進する世界の流れに逆行している。

しかし、再エネを進める電力会社にパワーシフトする企業や事業所が増えていることもまた事実であり、パワーシフト・キャンペーンではすでに15カ所をウェブサイトで紹介(http://power-shift.org/people/)、さらに呼びかけている。引き続き、持続可能な社会づくりをめざす市民や事業者、電力会社のみなさんの思いをつなぐ場をつくりながら、広げていきたい。

 

 

 

 

 

(2018年2月)