(監視委から回答あり)電力市場価格高騰に対応を求めます

電力市場価格の高騰が、4月以降も続いています。
パワーシフト・キャンペーンでは4月15日、政府に具体的な対策を求める要請書を、経済産業省電力ガス取引監視等委員会と、消費者庁に対して提出しました。
https://power-shift.org/220415_jepx_yousei/

要請書の中で質問への回答も依頼しており、4月27日、電力ガス取引監視等委員会からお電話およびメールにて回答をいただきましたので、その内容をお知らせします。

なお、消費者庁からはまだ回答をいただいていません。

<電力ガス取引監視等委員会からの回答(4月27日)>——————————

1.2021年度冬季(2~3月)と2020年度冬季(2~3月)との電力市場の取引額の比較。その差額の発生理由は何か、また差額の行先はどこか。

  • 2021年度冬季(2~3月)と2020年度冬季(2~3月)との電力市場の約定価格、取引量はそれぞれ下記の通りとなります。

約定量(億kWh)   約定価格(円/kWh)
2021年2月  269  7.5
2021年3月  266  6.2
2022年2月  269  20.6
2022年3月  263  26.2
(いずれの値も、JEPXホームページにおいて、公開されております。)

  • 2021年度冬季(2~3月)の電力市場での約定価格が昨年度同月と比べ上昇した理由は、有識者による審議会を通じて、以下のようにご確認いただいております。

①国際的な燃料価格が高騰していること
②気温低下による需要の増加等によりスポット市場における需給がタイトになっていること③需給がタイトな中で、供給力を十分確保できていない新電力が市場で更に電力を調達しようとするため入札価格が高くなっていること 等

  • 「差額の行き先」につきまして、特定することは困難ですが、国際的な燃料価格の高騰に鑑みれば、基本的には、燃料の追加的な調達に充てられていると想定されます。

2.2020年度および2021年度冬の電力市場価格高騰の状況について、「自由競争の範囲」であると言えるか否か。市場制度の不備として、是正の必要がないと言えるか。

3.今後どのような対応策を検討しているか。

  • 2020年度冬季の市場価格高騰以降、電力・ガス取引監視等委員会では、有識者による審議会においてご議論いただいた上で、電力市場における監視を強化するとともに、様々な情報公開に取り組んでまいりました。
  • 具体的には、
    ①市場価格が高騰した場合、入札可能量の全量が適切に市場供給されているか、大手電力に対して、入札データの提供を求めこれを確認するとともに、確認結果を速やかに委員会ホームページで公表してきました。
    ②また、スポット市場における売買入札の需給曲線の公開、発電所における一定規模以上の出力低下・停止理由の開示、ブロック入札の入札量および約定量の公開など、様々な情報公開を進めてまいりました。
  • また、これらに加えて、2022年4月からは、従来、市場価格に連動して算定されていたものを、実際に一般送配電事業者が使用した電源の価格に応じた算定とする新たなインバランス料金制度を導入しております。
  • 2021年度冬の卸電力市場価格の上昇は、燃料価格高騰等に起因するものですので、発電量の多くを火力発電により賄っていることに鑑みれば、市場として自然な動きともいえると認識しております。また、こうした卸電力市場価格の上昇は、日本だけではなく、諸外国のスポット市場においても生じていると認識しております。したがいまして、今般の価格上昇の一事をもって、卸取引市場の市場設計に問題があるとは考えておりません。
  • いずれにしましても、当委員会においては、健全な競争環境を確保するため、引き続き厳格な監視を行うとともに、市場参加者が適切な値決めを行えるよう、さらなる情報公開に取り組んで参ります。

(ここまで)———————————-

1.について、約定量と約定価格をかけ合わせた取引総額をみると、このように
2021年度は2020年度の2倍から3倍以上になっています。取引量はほぼ同じです。
2021年2月 約2017億円
2021年3月 約1649億円
2022年2月 約5541億円
2022年3月 約6891億円
回答では「燃料の追加的な調達に充てられていると想定されている」とありますが、それを大きく上回る額であり、これが適当と言えるのかどうか、引き続き検証が必要です。
倒産や廃業した小売事業者も多数出ているなか、遡及的な対策も議論すべき事態ではないでしょうか。

2.3.について、「市場設計に問題があるとは考えておりません」とのことですが、上記のように、燃料価格の上昇は当然あるとしても、それを大きく上回る価格がつく市場設計に、本当に問題がないと言えるでしょうか。
また2022年4月から、インバランス料金算定方法の見直しなどの対策が取られて以降も、市場価格が電気の販売価格に近い、もしくは上回ることが頻繁に発生しています。
いまだに事業環境として異常な状態が続いています。

パワーシフト・キャンペーンでも、引き続き検証と対策を求めていきます。

(2022年4月 パワーシフト・キャンペーン運営委員会)