*本件についての「新電力からの声」を下部に掲載しました。(12月16日)
2024年11月20日
パワーシフト・キャンペーン運営委員会
電力・ガス取引監視等委員会は11月12日、日本最大の発電事業者「JERA」が卸電力取引所が開設する翌日市場(スポット市場)において、市場相場を変動させる認識を持ちながらも、余剰電力の一部を供出していなかったことについて、同社に対する業務改善勧告を行った。
国のガイドラインでは、市場支配力を持つ大手電力会社等に対し、需要を超えて発電した「余剰電力」が出た場合に、そのすべてを市場に流通させることが定められている。しかし、JERAは2019年4月から2023年10月までの間、余剰電力全量の市場供出を行っていなかった。電力・ガス取引監視等委員会は、最も影響が大きい時では取引価格が1kWh当たり、50円以上値上がりした可能性があると指摘している。
JERAは、この原因について「システムの設定不備」だとするが、2019年の時点で問題を認識していた社員がいたにも関わらず、長期間にわたり改善が行われず放置されていた。この間、電力市場に与えた影響は非常に深刻であり、JERAの責任は重い。
とりわけ、2020年末から21年1月半ば、および2022年の春から秋にかけて起きた市場価格の高騰では、多数の新電力が経営危機に陥り、再エネを重視する新電力や地域新電力も例にもれなかった。一部の新電力は倒産や事業停止をし、そうでなくても多数が大規模な赤字を抱えた。新電力を選んだ消費者の多くも、電力価格の高騰という形で影響を受けた。
この間、電力・ガス取引監視等委員会は、市場価格高騰の原因や状況について調査を行ったものの「問題のある行為は確認されていない」としてきた。電力・ガス取引監視等委員会が、このような重大な問題を発見できずに放置してきた責任も重い。他の大手電力会社についても、徹底した調査を行うべきである。JERAに対しては、業務改善勧告にとどまらず、不正によって生じた収入の返還や罰金を科すべきである。
経済産業省は、今後改めて大手電力会社と新電力との間の経営格差を是正し、日本の電力市場を公正に運営しなければならない。徹底した調査と情報公開、さらに大手電力会社への規制や罰則の強化、監視体制の強化を求める。
関連情報
経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会(2024年11月12日)https://www.meti.go.jp/press/2024/11/20241112001/20241112001.html
事案の概要:20241112001-1.pdf
JERA(2024年11月12日)https://www.jera.co.jp/news/information/20241112_2052
参考
パワーシフトキャンペーン「(監視委から回答あり)電力市場価格高騰に対応を求めます」
https://power-shift.org/220428_jepx_yousei/
「自治体・地域新電力の可能性と市場価格高騰―2022調査報告書」(2022年12月2日)
https://power-shift.org/jichitai-chiiki-2022report/
気候ネットワークほか「共同抗議声明:JERAの電力市場の市場操作に対する業務改善勧告を受けて」(2024年11月15日)
https://kikonet.org/content/36859
報道記事
NHK「電力取引市場で相場操縦 『JERA』に業務改善勧告 経産省」https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241112/k10014636721000.html
産経新聞「JERAに電力相場操縦で業務改善勧告 経産省『利益得る目的あった』」
https://sankei.com/article/20241112-RIHFHACEAFMJ7J5JR7JRN3S2A4/
オルタナ「電力市場:公正な市場なくして公正な資本主義はあり得ない」
https://www.alterna.co.jp/139339/
新電力からの声
・相場操縦により、巨額に利益を得たことは言語道断、当社も2020年末から2022年度上半期にかけて巨額の損失を計上し、さらにその後も電気料金値上げにより需要家のみなさまに多大な迷惑をおかけしました。この損失分と電気料金値上げ分は、きちんと還元すべきです。(株式会社中之条パワー)
・あってはならないことだが、やはりそうだったか。という印象。氷山の一角に過ぎないような気もしました。(パルシステム電力)
・JERAの電力市場価格操作と併せ、電力・ガス取引監視等委員会の公正な立場であった認識が薄れ、全面的に遺憾に感じております。日本の電力市場が公正に運営される事を望みます。(TERA Energy株式会社)
・電力自由化の基本は「透明性」と「公開性」だと思いますので、今回の件は非常に重大な事案として受け止めています。(株式会社生活クラブエナジー)
・電力市場高騰は小売電気事業者に対して多額の損失を負わせただけでなく、消費者の新電力への信頼を失わせたという点において責任は非常に重い。再発防止に取り組むだけでは不十分で、監視等委員会はJERAが不当に得た利益額を公表すべき。(株式会社UPDATER)
・GPPは2年前の市場価格高騰で多大な被害を受けました。今回明らかになったことは、その市場価格高騰の一部の原因にすぎません。もっと本格的な解明が必要と考えています。GPPでは電力・ガス取引監視等委員会への報告を手始めに、あらゆる方法で、この問題の解明に取り組むつもりです。(グリーンピープルズパワー株式会社)
・当時より原因不明の高騰の際に、売り惜しみがあることは話題に出ていたので、やっぱりそうだよねという印象。(社名非公開)