(報告掲載)8/1 自治体は地域の自然エネルギーを使えるか?

報告、資料を掲載しました
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
自治体は地域の自然エネルギーを使えるか?
「環境配慮契約法」と自治体の電力調達
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
企業や事業所による再エネ電力の選択を考える場合、重要なアクターの一つが自治体です。
国や独立法人、自治体などの調達について、環境価値も含めて評価することを進めようという趣旨で、「環境配慮契約法」があります。
環境省がガイドライン(例)を示し、公的機関はそれぞれ、それに基づいて基本方針を策定すること、とされています。
官公庁や独立行政法人には義務付けられていますが、地方自治体は努力義務です。
電力については、CO2排出係数や未利用エネルギーの割合などによって裾切りを行い、一定の点数以上の事業者が入札に参加できるという方法が、基本方針として提示されています。
ただ、実際には、大手電力も含めほとんどの電力会社が入札に参加できる場合が多く、結局は価格で決まってしまいます。
そのため、現状では再生可能エネルギーを重視する電力会社や地域の電力会社との契約が必ずしも促進されるものとはなっていません。
地域の電力会社や再生可能エネルギーの調達を進めるためには、価格第一ではなく、その他の評価項目が最大限評価されるような総合評価方式が望ましく、環境配慮契約法のガイドラインでも推奨される必要があります。
本セミナーでは、自治体や公的機関による電力の環境配慮調達を進めていくために、現状や課題を共有します。
*環境配慮契約法について(環境省ウェブサイト) http://www.env.go.jp/policy/ga/
*環境配慮契約法 基本方針検討会、電力専門委員会
http://www.env.go.jp/council/35hairyo-keiyaku/yoshi35.html
◆日時: 2019年8月1日(木)15:00~17:00
◆場所: 東京ウィメンズプラザ 第2会議室(東京・表参道)
◆プログラム
・自治体の電力調達と環境配慮調達(FoE Japan 吉田明子)
・環境配慮契約法の実施状況と改善に向けた提案(グリーン購入ネットワーク 金子貴代さん)
190801_kaneko

・自治体が調達する自然エネルギーの電力に求められる要件(自然エネルギー財団 石田雅也さん)(公開資料はなし)
・質疑・意見交換
◆参加費: 無料
◆主催: パワーシフト・キャンペーン運営委員会
<報告>
最初にFoE Japan/パワーシフト・キャンペーンの吉田から、自治体は地域の再エネを調達できるかという観点で、全体状況の共有と問題提起を行いました。
2011年以降、①原発の停止にともなう化石燃料発電の増加につれ、電気料金が上昇したこと、②市民からの新電力からの調達を求める声の高まり、③電力小売全面自由化を見据えた動きとして、それまでの大手電力だけからの調達を見直し、新電力からの調達を積極的に進める自治体が増えてきました。しかし、全面自由化以降、新電力のシェアの増加(2019年3月で14.9%)は大手電力に大きな打撃を与え、大手電力の巻き返し(契約の取戻し)の動きが強く、自治体の調達にも余波が及んでいます。
環境配慮契約法にもとづく、「環境配慮調達方針」を策定している自治体もありますが、大手電力も十分にその基準を満たし、結局は価格での決定になる場合がほとんどのため、再エネを重視する新電力からの調達につなげるにはもう一工夫必要です。
グリーン購入ネットワーク(GPN)の金子貴代さんからは、まず環境配慮契約法の実施状況が共有されました。環境配慮契約法で定められているのは、二酸化炭素の排出係数や再エネの導入状況などを点数化し、70点以上の事業者に入札参加資格を付与するというものです。国や独立行政法人は実施が義務ですが、地方自治体は「努力義務」。そのため、環境省の調査によれば組織的な取り組みは10%程度とのこと。実施率が低いことが、一つ目の問題です。
もう一つの問題は、実施されたとしても結局は価格で決まってしまうため、裾切り方式では不十分だということです。GPNは、再エネ割合(地域性も)が高い事業者を高くできる総合評価方式の採用を提案しています。平塚市(神奈川県)や吹田市(大阪府)、世田谷区(東京都)、東京都ではそれぞれ独自の事業者選定基準をつくり、再エネ割合の高い企業などが落札しやすい方法を取っています。このような事例がもっと共有されて、ほかの自治体にも取り組みが広がるといい、と金子さんは言います。
自然エネルギー財団の石田雅也さんは、企業の再エネ調達をアドバイスする立場から、再エネ調達の際に重視・留意する点を共有しました。環境配慮契約法の電力調達の改善に向けては、再エネの「追加性(additionality)」も考慮すべきだと石田さんは言います。新たな設備導入につながることに加え、運転継続のための資金提供も追加性と考えられるだろうとのことでした。
会場には、自治体の環境政策の担当者も何名か参加し、コストと環境性のバランスを取ることが難しいという意見や、環境配慮契約法による調達方針を策定しているが、神奈川県の事例(吉田発表資料参照)のように現在は大手電力に契約が戻っているとの声、結局は価格で決まってしまうため、排出係数が悪くなる場合もある、といった声がありました。
地方自治法施行令では、自治体の入札・契約に関して、事業所所在地を要件として定めることを認めています(地域要件)。地元企業の受注機会の確保は認められているのですが、電力の調達にあたっては、必ずしも簡単ではないようです。奈良県生駒市では、自治体も出資する新電力(いこま市民パワー)との随意契約について、周辺自治体よりも電気料金が上がっているとの理由で批判があります。金子さんからも紹介のあった自治体のように、地元企業を優先するための、パートナー事業者としての位置づけなど、何らかのしくみの導入が必要です。
そのような事例を増やしていけるよう、情報の共有など、パワーシフト・キャンペーンとしても引き続き取り組んでいきたいと思います。
吉田明子(FoE Japan/パワーシフト・キャンペーン事務局)