つくろい東京ファンドで断熱DIY(2025年1~3月)

化石燃料が気候変動の原因、電気代高騰の原因となっています。その影響をより深刻なかたちで受けるのは、困窮者など社会的弱者です。

パワーシフトHOMEプロジェクトでは、エネルギー消費を見直し、かつ健康にくらすことのできる住まいに少しでも近づけるために、古い家屋やアパートでもできる簡易な断熱・省エネにも注目しています。

取り掛かりとして2025年1月から2月にかけて「つくろい東京ファンド」の事務所での簡易断熱DIY作業を行いました。また3/21に報告会を開催しました。

報告資料はこちら

■つくろい東京ファンドの事務所はこんなところ

つくろい東京ファンドは2014年、大家さんが東京都中野区にあるビルの3階を、困窮者支援への活用をと、安価で貸してくれたことから活動を始めました。
現在は、事務所とシェルター3部屋として使っています。
そのビルは現在築60年以上で、夏は暑く、冬は寒い部屋の中です。
エアコンは後付けで、配管は窓を通してあります。簡易的にふさがれているだけで、配管の周辺には1~2センチの、空が見えるほどの隙間が空いている状態でした。
冬はそこから冷たい空気が直接入ってきます。

一方夏は、直射日光が屋上からも壁からも室内を熱し、エアコンも効きにくい様子。エアコンを入れていても、30℃以上の室内環境となっていたそうです。


今回(2025年1~2月)はまず、冬の対策を行いました。まずサーモグラフィーカメラで簡単な測定を行い、その上で窓の隙間をふさぎました。また、一般的に熱が出入りしやすく、ボランティアの方も参加して作業しやすい窓に注目し、中空ポリカーボネートを貼り、事務所の2部屋にはさらに簡易内窓をつけるというDIYを行いました。

(事務所内部の写真)

■サーモグラフィーによる温度測定

元サーモグラフィー技術者の田渕透(パワーシフト事務局)がサーモグラフィーカメラで各部屋の天井、窓などの温度を測定し、以下のことがわかりました。

・窓はカーテンを閉めて使っており、断熱効果も期待されるが、カーテンの下部が冷えること

・天井は窓の面積の約4倍あり、詳細な診断が必要であること
・天井を通っているコンクリート梁が暖まりにくいこと

(詳細はPDFレポート参照)
なお、今回は冬の作業でしたが、夏は特に天井の断熱が必要となりそうです。

■みんなで作業!断熱DIY

今回は、元空調技術者の鈴木国夫さんに技術的な協力をいただき、計画の作成や材料の検討・準備、当日の指導・監督をしていただきました。

また、作業実施スタッフとして、つくろい東京ファンドが支援するアフリカ出身の難民の方などにもボランティア参加いただき、一緒に作業を行いました。


作業の様子


左から:窓枠周辺を掃除、中空ポリカをカット、
ゲル両面テープでガラスに貼り付け、窓に貼りました。

またエアコン配管窓用パネルやサッシの隙間をすきまテープ等で塞ぎました。

事務所では、コロナ禍以降、多くの人が集まるときには、常に換気扇を回しており、その分、エアコン配管の隙間から冷たい外気が流入していました。今回の工事では、その外気を、エアコン上部の空気取入れ口に導くようにダクトを設置しました。

ただ、隙間を完全にふさぐことはできなかったようで、このダクトは意図した効果は得られませんでした。

3つの居室(シェルター部分)については、転落防止用のバーがついていて内窓キットの設置ができない構造のため、隙間をふさぐ施工と、窓ガラスへの中空ポリカーボネート貼り付けを行いました。

☆作業の様子のショート動画 https://youtu.be/SwvDV4cKn5w
☆図面などの詳細はこちら

■その効果は?

実施前、寒い事務所では、常にエアコンは28~30℃に設定され、それでも隙間風が常に吹き込み、スタッフの方は重装備、時にはカイロを貼って仕事していたといいます。
隙間をふさぎ内窓がついたことで、「実感としてだいぶ暖かくなりました」と稲葉剛さん。
DIY後のエアコン設定温度は、より低い温度設定にすることを推奨します。


また、同フロアの3つの居室(シェルター)でも、とくに隙間をふさいだ効果で「冷たい風が入ってこなくなった」と居住者の方に喜んでいただけたとのことです。

また内窓の設置によって、断熱効果が高まったと推測されます。

居室については構造上内窓の設置ができませんでしたが、中空ポリカの貼り付けによって熱の出入りは抑えられていると考えられます。


また、内窓を付けた効果は以下の通りです。サーモカメラによる表面温度の比較では、左画像のとおり内窓を付けた場合は表面温度が約3℃高くなり、接触温度計による比較では、右図のように内窓を付けると約8℃高くなることがわかりました。

 


■今後への気づき

つくろい東京ファンドの事務所のように、築年数の古いアパートや木造住宅の場合、断熱以前に隙間をふさぐ対策、カーテン、段ボールを立てかけて冷気を遮るだけでも、寒さが緩和される場合もあります。

また、サーキュレーターをつかって部屋上部にたまる暖かい空気を足元に回すことで、エアコンの温度設定も下げても暖かく感じられ、省エネ効果が期待できます。


わかっていても余裕がない、具体的な方法がわからない、ということもありそうです。
もっと簡易的・基本的な省エネアドバイスや簡易対策でも、ニーズや効果があります。


簡易内窓をつけるDIYについては、材料費数万円から可能、簡単な工具でできます。

特に高齢者世帯や困窮者世帯、一人親世帯などでは実施が難しい場合もあるかもしれませんが、そういったサポートをどのようにできるのか、今後の課題です。
今回のレポートもぜひ参考にしていただけたら幸いです。

パワーシフト・キャンペーンのスタッフの家や事務局であるFoE Japanの事務所もDIYを実施しました。みなさまもぜひトライしてみてはいかがでしょうか?

パワーシフトHOMEプロジェクトでは、今回のDIYをきっかけに、事例を増やし、このよう

な簡易DIYを普及させる方法を考えていきます。


ご支援、ご協力、どうかよろしくお願いいたします!
https://power-shift.org/homeproject/

※この簡易断熱DIYは、地球環境基金の助成およびアーユス仏教国際協力ネットワークの支援により実現しました。心より感謝いたします。

(2025年4月)