5月12日(木)に超党派の国会議員連盟「原発ゼロ・再エネ100の会」の拡大世話人会にて、経済産業省(電力・ガス取引監視等委員会)および消費者庁に対しまして、電力価格高騰の原因と対策に関するヒアリングが行われました。
このヒアリングは、パワーシフトから4月15日に電力ガス取引監視等委員会および消費者庁に提出した要請書とそちらへの回答を題材として行われました。
・資料: 吉田資料、三宅資料、竹村資料、古賀資料
・録画:原発ゼロ再エネ100の会 http://blog.livedoor.jp/gempatsu0/
その際に、国会議員や専門家からも、大手電力と新電力(再エネ新電力)の事業環境格差が深刻であるという指摘が相次ぎ、5月26日(木)に以下の更問とともに、フォローアップのヒアリングが行われました。
・電力価格高騰に関する更問 (PDF)
12日、26日ともに、電力ガス取引監視等委員会からは、
「2021 年度冬の卸電力市場価格の上昇は、燃料価格高騰等に起因するものである」
「今般の価格上昇の一事をもって、卸取引市場の市場設計に問題があるとは考えていない」
「自由競争を阻害するような行動については監視しており、現在のところは行われていない」
とのコメントが繰り返されました。
インバランス料金の算定方法の変更(2022年4月)により、「kWhあたり80円」という異常高騰は回避されたものの、4月以降も夕方や曇天時の20~40円の価格や、深夜早朝も15円以上の価格が続き、引き続き新電力、とくに再エネ新電力にとって、事業の継続が非常に困難な状況が続いています。
大手電力は、自社の小売分などを確保したうえで「天然ガスの市場価格を反映した価格で、余剰電力を市場に販売する」というルールになっていますが、そもそもこのルールが公平とは言えないものです。
公平な競争環境の実現のためには、自由化以前に市民の負担(総括原価方式)で大規模電源を建設し確保してきた大手電力が、それらの電源を自社小売だけでなく他社や市場にも、公平な価格で売ることが必要です。
現状、電力ガス取引監視等委員会では、内部取引の量については確認していますが、その価格については経営情報であるとして確認していません。
(参考)
・電力ガス取引監視等委員会 第71回制度設計専門会合
「旧一般電気事業者の不当な内部補助防止策ーコミットメント実効性確保に向けた取組について」
https://www.emsc.meti.go.jp/activity/emsc_system/pdf/071_08_00.pdf
26日の会合では、大手電力の内部取引価格の公表について進めるべきだとの指摘があり、電力ガス取引監視等委員会から「検討する」との回答がありました。
いずれにしても、この状況が続けば、新電力や再エネ新電力の多くは、経営の危機がより深刻となり、倒産や事業撤退がさらに進んでしまいます。帝国データバンクによれば、2021年度末ですでに31社が、倒産または事業撤退しています。
これでは、消費者の選択の自由はなくなり、電力自由化や電力システム改革そのものが失敗に終わってしまいます。
地域分散型の再生可能エネルギーの活用や促進も妨げられ、大規模集中型の化石燃料発電や原子力発電に頼る体制が維持されることは、日本のエネルギーの将来にとっても危機的です。
この議論の続きとして、電力システム改革と市場制度のあり方について、6月2日(木)の「国会エネルギー調査会」で引き続き議論されます。
再エネ新電力の事業継続がかかっている状況、改善対策が早急に取られるよう、引き続き働きかけ、注視していきましょう。
(2022年5月 パワーシフト・キャンペーン運営委員会)