(報告)11/19市民・地域共同発電所全国フォーラム2023 in 京都

11/19に開催された市民・地域共同発電所全国フォーラムは4年ぶり12回目の開催になります。脱炭素社会の実現に向けた課題やビジョンを共有するとともに、その中で市民・地域共同発電所が果たす役割や今後の展望などについて検討を行いました。https://kikonet.org/content/31801

全部で4部構成となっています。

第1部:再エネ普及の課題と展望
第2部:脱炭素地域づくりと地域新電力(コーディネート:パワーシフト・キャンペーン)
第3部:市民電力が拓く地域の未来
第4部:再エネ普及に向けた多様な担い手づくり

 

パワーシフト・キャンペーンは脱炭素地域づくりの重要なプレイヤーとしての地域新電力に注目し、第2部のコーディネートを行いました。地域に電力を供給し、地域の再エネ電源を調達・開発することで、地域での経済循環を促す役割が期待されます。市民・地域共同発電所との今後の連携にも注目して議論しました。第2部についての報告をします。

*本イベントは地球環境基金の助成を受けて開催しています

第2部アジェンダ
<報告1>市民参加型PPA事業の今後の展望
 報告者:木原浩貴さん(たんたんエナジー代表取締役) 資料
<報告2>脱炭素に向けた京都市との連携
 報告者:霍野廣由さん(TERA Energy取締役) 資料
<報告3>VPP活用の可能性と地域新電力
 報告者:中西祐一さん(NR-Power Lab代表取締役) 資料
コーディネート:吉田明子(パワーシフト・キャンペーン/FoE Japan)資料

たんたんエナジーの木原さんからは市民参加型PPA事業の今後の展望と題してお話をいただきました。日本は多額の化石燃料を輸入していますがそれらエネルギー費用の流出を減らし、地産地消を進める必要性を示しました。また、再エネであっても、日本では、地域外の事業者が「収奪型」の再エネ利用によって利益を得ている可能性があるといいます。

これからは再エネ争奪戦となる中で、京都府温暖化防止センターが、自治体のエネルギー政策(エネルギーの地産地消)をサポートする目的で、福知山市と連携して立ち上げたのが地域新電力のたんたんエナジーでした。

たんたんエナジーは地域の太陽光発電の電気を地域の需要家に届ける地産地消を行うだけでなく、顧客(家庭)に対し、丹波丹後の「おいしい」産品を提供するなどさまざまな地域の取り組みを行っています。

またオンサイトPPAの取り組みでは、これからはFIT制度に頼らない、かつ市民が参加した再エネが必要、との考えにより、市民出資で公共施設に太陽光発電を設置する取り組みを実施しました。事業スキームには金融機関などが入っており、再エネ利用拡大の課題は、地域の合意形成にあり、地域金融機関からの資金投入の仕組みづくり、地域の合意形成を促す仕組みづくりが重要であるといいます。

さらに電気料金の一部で福知山市が認定するNPOなどのSDGsパートナーを応援する取り組みも実施し、電気料金の収益を地域に還元するしくみも取り入れられています。

これらエネルギーの地産地消などの取り組みをすることによって、気候変動対策は、環境・経済・社会の統合的発展に寄与する可能性があるといいます。課題としてはどうすればエネルギーを「手段」として地域に「面白さ」を生み出せるか?また地域での再エネの「受容性」を高めるために必要な取り組みや仕組みは何か?と示されました。

 

TERA Energyの霍野(つるの)さんからは、まず若い世代がさまざまな不平等を被っているなど、気候変動は平和の問題であるといいます。気候変動により生じる不公平・不平等は「静かな暴力である」。さらに子供たちが怖いのは、「環境の深刻さだけでなく口だけで行動しない大人の背中」「平和はあたりまえではなく先人が命がけで残してくれたもの」と説きます。

TERA Energyというのは、電気の仕組みを使って、みんなのこころが温かくなる工夫ができないかと考えてお坊さんが立ち上げた電力会社です。宗教都市である京都は、文化遺産を維持する必要があり、京都市とは、これまでに宗教者を対象とした勉強会を共同で開催しました。さらにより実践的な取り組みにすべく、地産地消の再生可能エネルギーを広める連携協定を締結しました。

またお寺だけの取り組みに留まらず広げるための工夫も語っていただきました。お寺のサプライチェーン、仏具屋など関係業者へ、脱炭素活動の呼びかけを行い気候危機の認知拡大を図っていると言います。

寺院が中心となり市民発電をサポートする活動では、 本願寺脱炭素基金を設立し、 全国の寺院・門信徒から出資を募り、市民参画のノウハウも提供し寺院をサポートしているとのことです。

さらに電力会社としての取り組みの一つである「ほっと資産」は、毎月の電気代を社会のためになるNPO等に寄付をしており、エネルギーの収益で社会課題をサポートすることの重要性についてお話いただきました。

電気を選ぶことは世界を変えること
「地域がより豊かになるように」
との思いで取り組みを進めているとお話いただきました。

 

NR-Power Labの中西さんからは、地域新電力の恵那電力や、あばしり電力を立ち上げた経験も活かし、地域で発電した電気を調整する事業について報告いただきました。

これからの脱炭素社会においては自然に左右され、電力量が変動する電源である再エネが増えていき、電力の調整機能を持つ火力発電所は減っていきます。その火力発電所の調整機能に対し、我々はお金を払っているようなものです。しかし火力が市場から退出していく中で、電力の地産地消をすればするほど、電力の調整は難しくなっていきます。そのような状況で域内経済循環をどうやって実現させるか?という課題への取り組みについてお話いただきました。

これからは再エネを支える調整力である仮想発電所VPP(バーチャルパワープラント)が非常に重要で、点在するエネルギーリソース(蓄電池、工場、空調、照明など)をIoT制御し調整をしているとのこと。

NR-Power Labが取り組むVPPの特徴について説明がありました。他のVPPは大規模な蓄電システムがメインとなっており広いエリアを想定しているとのこと。同社のものは多様なエネルギーリソースの組み合わせにも対応し、消費電力量を予測し、より狭いエリアでの細かい調整を可能にするというところだと説明いただきました。その調整力を地域を重視する新電力に使ってもらい、地域単位でのVPPを実現したいとの思いで事業を行っていると言います。

大規模VPPと地産地消型VPPが共存しながら持続可能な社会の実現を目指していきたいと話していました。

 

コーディネートをつとめたFoE Japan/パワーシフト・キャンペーンの吉田からは、再エネ新電力へお金を支払えば地域の関係性も回っていく」とし、これからも地域を重視する地域新電力の取り組みに注目し広げていく必要性をお話しました。

 

脱炭素先行地域に選定された74地域うち少なくとも39の地域で、地域新電力と連携もしくは今後の立ち上げが予定されているようです地域の再エネの促進・活用と地域の課題解決をつなぐハブとして、地域新電力の役割は今後ますます期待されます。

2022年の電力市場価格の高騰で、地域新電力も多くが厳しい状況となりましたが、2023年にはようやくその状況が改善しました。各社、地域での再エネ建設や調達を強化し、価値を高める工夫をして再スタートしています。

パワーシフトキャンペーンはこれからも再エネ重視、地域重視の新電力を応援し取り組み内容を広げる活動をしていきたいと思います。

(2023年11月)

—— プログラム案内文 —–

イベントタイトル 市民・地域共同発電所全国フォーラム2023 in 京都
日時 2023年11月19日(日)10:30〜17:50
会場 龍谷大学深草キャンパス 22号館 101教室
開催形式 対面・オンラインによるハイブリッド方式
*今回のフォーラムでは印刷資料の配布を行いません。資料は事前・事後にオンラインで公開、ダウンロードしていただけるようにする予定です。あらかじめご了承ください。
参加費 無料。要事前申し込み。
定員 200名(会場)、上限500名(オンライン)
開催団体 <主催>
市民地域共同発電所全国フォーラム2023実行委員会

 

<企画・運営>
気候ネットワーク、パワーシフト・キャンペーン、市民電力連絡会、自然エネルギー市民の会

<共催>
龍谷大学地域公共人材・政策開発リサーチセンター(LORC)

<協力>
おかやまエネルギーの未来を考える会、地球環境市民会議(CASA)、NPO法人エコプランふくい、ほか

備考 ※このウェビナーは、2023年度独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて開催します。
 
 
 

イベント趣旨

 市民・地域共同発電所全国フォーラムは、2002年から2007年までに5回の「市民共同発電所全国フォーラム」を開催し、2013年からは市民・地域共同発電所全国フォーラムとして2019年までに6回を開催してきましたが、コロナ禍の影響から2019年の岡山大会以降開催を見合わせてきました。

 この間、温室効果ガスの2030年削減目標・再エネ電力目標の設定、電力市場価格の高騰、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー危機、政府のGX推進など、さまざまな変化が起こってきました。また、2012年7月の固定価格買取制度の成立から10年以上が経過し、市民・地域による取り組みもさまざまに変化してきました。

 そこで、今年度、市民・地域共同発電所全国フォーラムを開催し、脱炭素社会の実現に向けた課題やビジョンを共有するとともに、その中で市民・地域共同発電所が果たす役割や今後の展望などについて検討を行います。

 同フォーラムは情報、ノウハウ、課題を共有するとともに、地域主導の再生可能エネルギー普及に取り組む主体のネットワーク化を目的にしています。全国の再エネ発電所づくり、再エネ事業を行なっている方、これらに関心のある方はぜひご参加ください。

 

プログラム

第1部:再エネ普及の課題と展望(10:30〜12:00)

 FIT施行からおよそ10年が経過し、この間、日本でも再生可能エネルギーの普及が進むとともに、世界的なエネルギー危機、政府のGX推進、再エネ出力抑制の頻発などさまざまな変化が起こってきました。改めて再生可能エネルギーの普及を進めていくための課題を整理するとともに、私たち市民・地域の主体にできることは何かを考えます。

<報告1>日本の気候エネルギー政策の課題

 報告者:高村ゆかりさん(東京大学)

<報告2>再エネ市民事業の現在地~『市民発電所台帳2023』から

 報告者:山﨑求博さん(市民電力連絡会)

<報告3>龍谷大学の再エネ関連の取り組み

 報告者:深尾 昌峰さん(龍谷大学政策学部教授)

 

第2部:脱炭素地域づくりと地域新電力(13:00〜14:30)

 脱炭素地域づくりの重要なプレイヤーとしての地域新電力に注目します。地域に電力を供給し、地域の再エネ電源を調達・開発することで、地域での経済循環を促す役割が期待されます。市民・地域共同発電所との今後の連携にも注目して議論します。

<報告1>市民参加型PPA事業の今後の展望

 報告者:木原浩貴さん(たんたんエナジー代表取締役)

<報告2>脱炭素に向けた京都市との連携

 報告者:霍野廣由さん(TERA Energy取締役)

<報告3>VPP活用の可能性と地域新電力

 報告者:中西祐一さん(NR-Power Lab代表取締役)

<コーディネーター>吉田明子さん(パワーシフト・キャンペーン/FoE Japan)

 

第3部:市民電力が拓く地域の未来(14:40〜16:10)

 国内電力需要の1%もまかなえない市民・地域発電所ですが、地域課題の解決や気候危機対策、農林業復活の切り札として注目されています。自治体や地域新電力との協働で、市民・地域発電所は新たなフェーズに入ります!

<報告1>藤川まゆみさん(上田市民エネルギー代表)

<報告2>東光弘さん(市民エネルギーちば代表取締役)

<報告3>手塚智子さん(市民エネルギーとっとり代表)

<コーディネーター>竹村英明さん(市民電力連絡会/イージーパワー㈱)

 

第4部:再エネ普及に向けた多様な担い手づくり(16:20〜17:50)

 市民・地域が主体となる再生可能エネルギーを普及するためには、その担い手となる存在が不可欠です。しかし、発電事業だけで担い手を確保することは難しく、担い手の解釈を拡げる必要があります。若者世代の活動・事例をもとに今後求められる担い手づくりの可能性について探っていきます。

<報告1>学生気候会議と大学の役割

 報告者:岩佐祐吾さん、川口克基さん(龍谷大学)

<報告2>市民・地域共同発電所と人権

 報告者:安愛美さん(京都大学大学院/ウトロ平和祈念館)

<報告3>ソーラーシェアリングという選択肢(仮)

 報告者:長谷川諒さん(小田原かなごてファーム)

<報告4>市民・地域によるエネルギーの地産地消(仮)

 報告者:神島仁美さん(TERAエナジー)

<コーディネーター>大同唯和さん(京都大学/気候ネットワークインターン)

 

懇親会(18:20ごろから20時ごろ)

会場:龍谷大学生協食堂 参加費:4000円程度を予定

定員:50名程度  *要事前申し込み

 

エクスカーション(予定・詳細企画中)

日時:11月18日(土)午後13:30から2時間程度

内容:宇治市内のウトロ平和記念館(https://www.utoro.jp/)の市民共同発電所の視察を予定

参加費:500円(入館料として) 定員:20名(先着)

集合場所:近鉄京都線「伊勢田駅」 

*詳細企画中のため詳しくは追ってご連絡いたします。

<元ページ(気候ネットワーク):https://kikonet.org/archives/31801 >