2020年7月9日
パワーシフト・キャンペーン運営委員会
東京・生活者ネットワーク、国際環境NGOグリーンピース・ジャパン
電力システム改革、電力小売全面自由化を機に、全国に多数の新電力会社が発足し、電力小売をめぐる状況が変化している。全面自由化前(2016年3月)に約5 %だった新電力のシェアは、4年で約16 %に伸びている。一方で、旧一般電気事業者(以降、大手電力と表記)の低価格による「取戻し」も問題となっている。
電力の需要家として、自治体は重要な役割を担っている。パワーシフト・キャンペーン運営委員会は2019年度、一橋大学自然資源経済論プロジェクト、朝日新聞社および環境エネルギー政策研究所とともに47都道府県、20政令指定都市および再生可能エネルギー調達などで注目すべき市区町村を対象に、「自治体の電力調達に関する調査」を実施した。
この結果を踏まえ、東京都内の自治体について同内容を確認したのが今回の調査である。パワーシフト・キャンペーン運営委員会(事務局:国際環境NGO FoE Japan)が、東京・生活者ネットワーク、国際環境NGOグリーンピース・ジャパンとともに実施した。
東京都は2019年5月、2050年にCO2排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」を実現することを宣言、同12月にはその実現に向けたビジョンと具体的な取り組みロードマップをまとめた「ゼロエミッション東京戦略」を策定している。その方針が東京都内自治体に今後どのように反映されるかも注目である。
・報告書のダウンロードはこちら
・各自治体の契約状況一覧表(報告書の一部)はこちら
(A4サイズ1ページです。A3サイズに拡大して印刷すると見やすいです。)
- 調査目的: 「自治体の電力調達の状況に関する調査(2019年度)」に続き、東京都内の自治体を対象として、電力調達の状況やその方針を可視化し、望ましいあり方を考察することを目的として実施
- 実施主体: パワーシフト・キャンペーン運営委員会(事務局:国際環境NGO FoE Japan)、東京・生活者ネットワーク、国際環境NGOグリーンピース・ジャパン
- 調査内容: 本庁舎の電力調達先(2011~2020年度)、電力調達方針、再生可能エネルギーに関する方針など
- 調査方法: 調査票をメールで送付し、メール等で回答を得た。必要に応じて電話・訪問ヒアリングを実施
- 調査期間: 2020年2月~4月
- 調査対象: 東京都内の62自治体(環境担当部署・調達担当部署)
うち回答62(100%)
<調査結果概要>
- 2019年度調査と同様に東京都内自治体でも、本庁舎の電力契約において入札などで東京電力が落札する事例が増えている。以前からの継続も含め、4分の3近くが東京電力からの調達である。
- 東京都内では、7割以上の自治体が電力調達に関する何らかの環境配慮の取り組みを行っている。
- 清掃工場の廃棄物バイオマス発電の活用が各所で見られる。
- 再エネ100%やCO2ゼロ電気の調達や、再エネ調達の方針策定も一部で見られる。
- 他地域自治体との連携による再エネ調達も特徴としてみられる。
<考察>
- 入札において東京電力が落札するなどの事例が目立つが、その背景に大手電力と新電力との間の格差(電源保有、顧客情報など)があり、それを支える制度状況となっていることがうかがえる。
- 東京都内自治体の電力の環境配慮調達は比較的進んでいるが、再エネ調達には必ずしもつながっていない。再エネ調達を進めている自治体の事例が参考になる。
- 気候変動政策・エネルギー政策と電力調達とを関連づける取り組みは、一部で始まったところであり、今後に期待される。
- 「実質再エネ100%電気」「CO2ゼロ電気」などはその中身を見ることも必要である。
<提言>
- 自治体こそ、主体的に温暖化対策・エネルギーシフトに取り組むべきである。電力調達は、自治体のエネルギー政策や気候変動政策と密接に関わる。環境政策の一環として取り組む必要があり、環境担当部署が連携・関与していくことが望ましい。
- 環境省の環境配慮契約法における基本方針(電力調達)では、現状の裾切り方式ではなく総合評価方式を示すよう改訂すべきである。また、先進的な事例の共有・普及が望まれる。
- 東京都内各自治体においても、中長期のエネルギービジョンや温室効果ガス削減計画を策定し、全国に先がけて取り組むことが求められる。
- 再生可能エネルギー調達の取り組みを進めるために、つながりのある他自治体との連携も視野に入れる必要がある。
連絡先:パワーシフト・キャンペーン運営委員会 事務局
〒173-0037 東京都板橋区小茂根1-21-9 FoE Japan内
info@power-shift.org 03-6909-5983