再エネを重視する新電力が相互に課題を共有し、政策課題に対しても連携した働きかけなどを行っていくための勉強会、第4回目は、10月1日(木)に、「地域新電力の現状とこれから」をテーマとして開催しました。
電力会社9社、運営メンバー、メディアなど約30名が参加し、地域新電力の価値と今後のあり方について議論しました。
地域新電力は全国に約50か所と広がっていますが、今後生き残り意義を発揮するためには、価格だけではない地域とのつながりや地域経済循環をどう作っていけるかが鍵となります。地域の再エネをどう調達するか、どう雇用を生み出すか、地域の課題解決とどう結びついていけるか・・・多くの再エネ新電力にも共通する課題について、稲垣さんとともに考えました。
また9月14日に結果が公表された容量市場についても、再エネ新電力への影響を議論しました。
【1】地域新電力の現状とこれから(ローカルグッド 稲垣憲治さんより)
※参考資料はこちら
「自治体新電力の現状と地域付加価値創造分析による内発的発展実証」
http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/renewable_energy/stage2/contents/page0245.html
<ポイント>
・地域新電力のうち、自治体出資があるのは約50。そのうち供給開始しているもの40を調査。
・自治体行政区を地域とした場合の地域出資の割合は平均54%、都道府県を地域とした場合は62%。ただし、企業については地域外企業が約1.5倍。地域企業のさらなる参画が期待される。
・電源は、地域の再エネ電源・FIT電源の割合は平均36%でまだ低位。
・FIT電気のため、CO2排出係数は低くない。
・供給先は公共施設主体のところが多く、民間施設への供給が少ないことは課題。
・業務をどれだけ内製化しているかをみると、需給管理業務は約8割が外部委託、、料金請求も6割が外部委託で、従業員数も少ない(0名が15/40もあり、5名以下がほとんど)。
・地域経済付加価値の指標(どれくらい地域にお金がおちるかの指標)でみると、ひおき地域エネルギーは、現状の自治体新電力の平均に比べ3倍近く地域でかせげている。
・事業の形態(地域資本、地域雇用、業務の内製化)によって地域の利益は大幅に異なる。やり方によっては都市にお金が行ってしまう。
・地産地消をどのように進めるかが重要。地域の再エネ開発や省エネの具体的な提案などもできたらいい。
【2】地域新電力に関する意見交換
参加社の中にも、自治体新電力や民間主体で地域にフォーカスした電力会社もあり、自治体との関わりも含めて意見交換を行いました。
・自治体新電力は、現状必ずしも再エネや環境を目的としてはいない(残念ながら優先順位が低い)。自治体の再エネ政策や気候変動目標を定めたうえで、その達成のために新電力事業を位置づけることが望ましい。
・利益を地域の再エネ電源に再投資していくことを進めていきたい。
といった意見が出されました。
(パワーシフト・キャンペーンで実施した下記の調査もご参考ください)
「自治体の電力調達の状況に関する調査(2019)」
http://power-shift.org/jichitai_report2019/
「東京都内自治体の電力調達の状況に関する調査2020」
http://power-shift.org/jichitai-tokyo-2020report/
8/5 オンラインセミナー:自治体の電力調達と気候変動政策
https://power-shift.org/jichitai-seminar-200805/
【3】容量市場に関する意見交換
・負荷率の低い地域新電力にとっては特に打撃が大きい。試算では赤字になってしまい存続の危機のレベルである。
・大手電力の格差拡大は深刻であり、ここで生き残れるかが大きな課題である。
・負担割合の計算は前年度の実績に基づくため、2023年度に向けてピーク需要の削減など、具体的な対応も実施する必要がある。
・パワーシフトだけではなくほかのネットワークも含めて、再エネ系電力会社で経産省・環境省への申し入れを準備した。
次回は11月に、託送料金への賠償負担金・廃炉円滑化負担金の参入をテーマに実施予定です。
(2020年10月13日 パワーシフト・キャンペーン運営委員会)
これまでの報告
第1回 5/26 「エネルギー供給強靭化法案」
https://power-shift.org/200526-seminar-report/
第2回 6/25 「再エネ新電力の危機―電力新市場」
https://power-shift.org/200625-seminar-report/
第3回 8/20 「再エネ電力の販売方法」
https://power-shift.org/200820-seminar-report/