「容量市場拠出金支払いの現状に関する調査」2024報告書を発表

2020年度から導入された容量市場の拠出金の支払いが、2024年度から始まります。容量拠出金とは、容量市場オークションで確保された発電設備に支払うお金を、小売電気事業者と送配電事業者から、夏・冬のピーク電力に応じて回収するものです。

パワーシフト・キャンペーンと朝日新聞社では、自治体が出資もしくは関与する地域新電力および、「パワーシフト・キャンペーン」に参加する新電力を対象とし、2024年度の容量拠出金の現状やその対応を聞きました。あわせて、旧一般電気事業者などへのヒアリングを行いました。

地域新電力等の回答では、2円/kWh以上の負担が約9割を占め、半数以上が値上げを予定していることがわかりました。
容量市場の意義や負担のあり方についても、疑問や反対の意見が多くあげられました。

電力システムのあり方を再考するための材料として、ご覧いただけたら幸いです。

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<調査概要>

調査タイトル: 容量市場拠出金支払いの現状に関する調査

調査目的: 2024年度に開始する容量拠出金について、地域新電力等の負担状況や対応を明らかにする。
旧一般電気事業者の対応状況と比較し、地域新電力事業に与える影響などを考察する。

実施主体: パワーシフト・キャンペーン運営委員会(事務局:国際環境NGO FoE Japan)、朝日新聞社

調査対象: 以下の合計 116者を対象としてアンケートを送付した。
自治体が出資・関与している新電力 97者(経済産業省の リストから抽出)
パワーシフト・キャンペーンで紹介する新電力 19 者(自治体関与新電力との重複をのぞく)

回答数: 回答はうち75者(回答率約65%)

 

調査内容: (文献調査)容量市場の概要や状況など
(アンケート調査)容量拠出金負担の状況、容量市場に対する評価、対策や要望など
(ヒアリング調査)アンケート調査回答者の一部、旧一般電気事業者、専門家など

調査期間: 2024年1月~3月

<調査から見えること>

  • 大手電力(旧一般電気事業者)と地域新電力等について、容量拠出金負担の経営への影響および価格転嫁に大きな差異が見られる。
    • 大手電力は大規模電源を所有するため容量確保契約金の受け取りもあり、収支への大きな影響は見られない。
    • 一方地域新電力等は、容量拠出金の「負担」のみの場合が多い。また容量市場により市場価格が安定するかは不透明である。
  • 大規模電源を持たない地域新電力等からは、容量市場の意義や負担の公平性についても疑問の声が上っている。
  • 容量市場は、現状大規模な既存電源を支えるための制度となっている。落札電源の状況をみても、年数の経過した化石燃料発電や原子力発電を支える形となっている。
  • 容量市場への変動型再エネの参加は1%に満たない。また、昼間の太陽光の活用など再エネの柔軟な利用と逆行する制度設計となっている。

<提言>

  • 省エネ・再エネの促進を電力政策の大前提とすべき。
  • 容量市場では既存の火力・原子力が優遇される状況となっている。
    再エネを中心とする電力・エネルギーシステムの大きな転換のために、容量市場自体のあり方について根本から見直すべきである。
  • 地域新電力等の経営負担となり、消費者や地域の再エネ選択が脅かされる状況もふまえ、容量市場の抜本的見直しが必要である。
  • 容量市場の類似制度として長期脱炭素電源オークションも開始されているが、当面大規模な化石燃料発電が支援される方向性には変わりはなく、合わせて見直すべきである。
  • 「容量確保」という考え方自体を見直し、柔軟な需給調整とともに変動型再エネ(太陽光・風力)を大きく導入する必要がある。そのためには、系統の柔軟な運用が重要であり、それを実現する電力システム改革こそ必要である。

(2024年4月4日)