再エネを重視する新電力が相互に課題を共有し、政策課題に対しても連携した働きかけなどを行っていくための勉強会、第6回目は、2021年6月23日(水)に、「内閣府再エネ規制改革タスクフォースの提言と議論」をテーマとして開催しました。
2020年11月、「2050年カーボンニュートラル」の表明を受けて、その実現と再エネの主力電源化に向けた課題を整理するため、内閣府に「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」が設置されました。
会議では、再エネの設置に関する規制の現状と課題とともに、電力システム改革のあり方についても大きなテーマとなっています。
そこでこの度、パワーシフト・キャンぺーンに参加する電力会社と、タスクフォース構成員の大林ミカさん(自然エネルギー財団事業局長)との意見交換を実施しました。電力会社10社、運営メンバー、メディアなど約30名が参加し、おもに新たな非化石価値取引市場の課題などについて議論しました。
【1】背景
内閣府再エネタスクフォースでの提案・議論をもとに、以下の改革が進行・検討中。
・6月3日の第10回会合「これまでのタスクフォースの成果について」
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/conference/energy/20210603/agenda.html
この資料1の4ページが、小売電気事業者に関わりのある部分
非化石価値取引市場が、2021年11月より「再エネ価値取引市場」と「高度化法義務達成市場」とに分かれる。しかし、高度化法義務達成に再エネ価値取引市場の証書が使えないこととなっており、むしろゆがんだ構造となっている。
1)再エネ価値取引市場(FITのみ)
*小売電気事業者に加え、企業も直接買えるように
*JEPXを通じた取引のみ
*トラッキング(産地など明記できる)あり
*収入はFIT賦課金軽減にあてる
*高度化法義務の対象外
2)高度化法義務達成市場 (FIT以外、水力や原子力、廃棄物など)
*小売電気事業者のみ
*JEPXを通じた取引のほか、相対取引も可能
*収入は発電事業者に
*高度化法義務あり
【2】大林ミカさん(自然エネルギー財団事業局長)からの話題提供
※資料はこちら
<ポイント>
・日本の電力市場には電源トラッキング制度や電源情報の義務づけがなく、需要家・消費者への情報や、多様な購入手段の提供に欠けている。
・日本の現在の非化石価値市場は、価格が1.1~1.3円と海外(0.05円程度)と比べて高く、需要家の使い勝手はよくない。2020年度の販売実績でも、大型水力と原子力が中心で、FIT証書はほとんど売れ残っている。
・大口の需要家も一般家庭の消費者も、「非化石」ではなく、再エネの購入を望んでいる。
・こうした要望に応えて新設される「再エネ証書市場」(トラッキング付きFiT再エネ市場)は、第一歩であることは確かだが、一方で高度化法の義務市場はそのまま残るため、小売事業者は、原子力や大型水力の証書の買取を義務づけられるという歪んだ構造になる。
・しかも、原子力は「非FiT非再エネ」とされており、原子力による証書であることが隠されている。
・FiT再エネは賦課金補填のために還元されるが、原子力や大型水力は、総括原価時代に建設された発電所の所有者に、利益を直接与えるだけであり、新しい再エネの拡大には役立たない。
・また、小売事業者が非化石証書購入の負担を転嫁するのは、一般家庭の消費者と予測されるため、消費者が原子力証書を買わされることとなる。
・本来、すべての証書の電源の名前を示し、またシングルプライスではなく価格差をつけるべき。持続可能でないバイオマスを避けたい、等の要望もある。価格差を設けることにより、高い価格のついた電源への投資が進む。新しい再エネの追加が求められる。ところがこれが隠されているのが日本の市場。
【2】意見交換
・「高度化法」がそもそも大きな問題であり、廃止・見直しする必要がある。
仮に義務付けする場合にも、小売電気事業者ではなく発電事業者を対象とすべきではないか。
・すぐにやるべきは、FIT証書を高度化法の義務達成に使えるようにすることだ。
・再エネ証書の下限価格については、引き下げることでより使いやすくし、取引を活性化せることが重要ではないか。まずは、再エネ証書の需要を増やすことで再エネ拡大につなげる必要があるのではないか。(*ただし、化石燃料電源に再エネ証書をつけることも可能となるため、需要家は電源構成に注意)
(2021年7月 パワーシフト・キャンペーン運営委員会)
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これまでの報告
第1回 5/26 「エネルギー供給強靭化法案」
https://power-shift.org/200526_seminar-report/
第2回 6/25 「再エネ新電力の危機―電力新市場」https://power-shift.org/200625_seminar-report/
第3回 8/20 「再エネ電力の販売方法」
https://power-shift.org/200820_seminar-report/
第4回 10/1 「地域新電力の現状とこれから」
https://power-shift.org/201001_seminar-report/
第5回 11/11 「託送料金問題と訴訟の取り組み」
https://power-shift.org/201111_seminar-report/
以上