パワーシフト電力会社セミナー・意見交換(第5回) 「託送料金問題と訴訟の取り組み」

再エネを重視する新電力が相互に課題を共有し、政策課題に対しても連携した働きかけなどを行っていくための勉強会、第5回目は、11月11日(水)に、「託送料金問題と訴訟の取り組み」をテーマとして開催しました。

電力会社6社、運営メンバー、メディアなど約20名が参加し、託送料金への賠償負担金・廃炉円滑化負担金の算入の問題について議論しました。

2016年から2017年にかけて大きな議論がありながら決まった「福島第一原発事故の賠償費用と廃炉円滑化負担金の託送料金への上乗せ」がいよいよ10月1日から始まっています。本来、東京電力および原子力事業者が責任をとり負担すべき費用を、消費者が負担するというしくみです。

パワーシフト・キャンペーンでも、2016年には署名や新電力へのアンケートなど活動をしました。グリーンコープ共同体は、この問題に2016年度から継続して取り組み続けています。上乗せを認めた経済産業省令は違法であるとし、その取り消しを求めて10月15日、福岡地方裁判所に提訴しました。

これまでの経緯や問題点について、松田節子さんに共有いただき、また、消費者への状況提供(請求書やウェブサイトでの表示)や今後の取り組みについて意見交換しました。

【1】託送料金問題と訴訟の取り組み(グリーンコープ/グリーンコープでんき 松田節子さんより)
※資料はこちら

<ポイント>

・グリーンコープは1986年のチェルノブイリ原発事故時から、原発問題に取り組んできた。

・2016年4月から「グリーンコープでんき」として小売事業を開始したが、9月8日に「廃炉費用や原発事故賠償費用が託送料金上乗せに」との新聞報道があり、大きな衝撃を持って受け止めた。

・そこから託送料金検討委員会をつくり、各電力会社の有価証券報告書や電気事業法などを調べていった。

・託送料金にはすでに電源開発促進税や使用済燃料再処理等既発電費相当額が含まれていることや、賠償負担金、廃炉円滑化負担金は国会での審議ではなく経産省で決まったことなどを確認した。

・賠償負担金は東電救済でしかない。

・廃炉円滑化負担金も、本来原発事業者が支払うべき。廃炉費用は青天井だといわれている。

・2011年6月に、原子力損害賠償支援機構の設立が閣議決定。賠償費用の援助には上限を設けず、必要があれば何度でも援助できるようにし、原子力事業者を債務超過にさせないことが決まった。

・グリーンコープは、賠償負担金と廃炉円滑化負担金の上乗せは違法であると考え、2020年9月4日の経済産業省の託送供給約款の認可の取り消しを求める行政訴訟を起こすことにした。

・2018年から2020年にかけ、経済産業省や電力会社と何度も意見交換を繰り返した。

・廃炉円滑化負担金の徴収開始により、関西電力では電気料金値下げも。

・グリーンコープは、託送料金問題訴訟を通じて、原発事故の責任の明確化や原発そのものの問題点や民主主義についても問題提起をしたい。

・グリーンコープでは、電気料金の明細書に賠償負担金と廃炉円滑化負担金を掲載予定。ただし、消費者に転嫁しないために、相当額の値引きを行う。

・近日中に「訴訟の会」を立ち上げる予定であり、そちらに個人や団体での賛同を呼び掛けたい。

・「託送料金を問う」:https://www.greencoop.or.jp/takuso-ryokin/
・託送料金訴訟について:https://www.greencoop.or.jp/takuso-ryokin/soshokeikahokoku/

【2】意見交換

・2016年、公共料金調査会の下に託送料金調査会が設置された(当時、河野太郎さんが消費者担当大臣)。託送料金が今後どうなるのか、消費者としても注目していかなければならない。
電力託送料金に関する調査会報告書の概要:
https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/kokyoryokin/takuso/doc/010_20200824_sankou.pdf

・託送料金のあり方が現在見直されている。電力自由化のなかで送配電部門のみ規制料金として残っている。2023年より、総括原価方式からレベニューキャップ方式に変わる。議論の途中である。もう一つの論点が配電事業の自由化。配電事業者がどうやったら手を挙げるか、地域とどうやって協力していくか。今の状況では小さな再エネ事業者が配電事業に参入できる状況ではない。そこをどうしていくか?
レベニューキャップ制度の検討について(託送料金問題専門調査会 資料より)https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/kokyoryokin/takuso/doc/012_20201105_shiryou1.pdf

・消費者委員会意見書(賠償負担金、廃炉円滑化負担金の上乗せについて)https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/kokyoryokin/takuso/doc/010_20200824_shiryou4.pdf

・裁判の争点としている、で廃炉円滑化負担金などをとることを決定した政省令についての法律的取り扱いはあるか?
→憲法84条、新たに租税を課す際には・・・ 国民負担の租税については法律によって議論して決めなければいけないということが規定されている。政令だけで国民の不利になることを決めたことは、法律の委任を超えている。そこで訴訟を提起している。

・同様の訴訟を起こしているところはあるか?託送料金の上乗せしない新電力はほかにもあるのか?裁判で負けた場合はどうするのか?
→値引きはほかの電力会社ではないだろう。負けた場合には会社負担。ほかには訴訟はないが、検討しているグループはあるようで、相談はしている。
電事法の施行規則では徴収義務がある。基本的には徴収しなければいけない。義務。今回の二つの上乗せ費用は金額は大きくはないが、意味としては大きい。

・基幹組合員に説明されて、どのような反応だったか?
→総代会を3回開いている。今年2月に臨時の総会。各生協での総代会があるが、その前に組合員の学習会がある。組合員と対話を続けてきた。組合員のご意見に一つひとつ応答していく。反応としては、福島の支援をしなければいけないので託送料金で払ってもいいのではないかという意見もあった。組合員は原発の是非を問うてほしい。そこをぐっと抑えて、託送料金を争点にということを納得いただいている。資料などは下記にアップしている。

「託送料金を問う」https://www.greencoop.or.jp/takuso-ryokin/

・GPPではHPに本問題について解説をしており、料金明細にも記述予定
https://www.greenpeople.co.jp/information/2588/

<参考資料>

・福島第一原発事故の賠償負担金と廃炉円滑化負担金の託送料金への上乗せが開始、2020年10月1日から
http://e-shift.org/?p=3891

(2020年11月30日 パワーシフト・キャンペーン運営委員会)

これまでの報告
第1回 5/26 「エネルギー供給強靭化法案」
https://power-shift.org/200526-seminar-report/
第2回 6/25 「再エネ新電力の危機―電力新市場」
https://power-shift.org/200625-seminar-report/
第3回 8/20 「再エネ電力の販売方法」
https://power-shift.org/200820-seminar-report/
第4回 10/1 「地域新電力の現状とこれから」
https://power-shift.org/201001-seminar-report/