投稿日: 2023-11-302024-02-16(報告)持続可能な地域創造ネットワーク2023年度全国大会 in 境町 11月21、22日に茨城県境町で開催された「持続可能な地域創造ネットワーク2023年度全国大会」に参加しました。プログラム ”持続可能な地域創造ネットワークは、持続可能な社会を地域から実現するため、自治体とNGO/NPO、専門家・教育関係者、学生団体等が対等に役割を持ち、互いの「持続可能な地域づくり」に向けた活動を支えあう、まったく新しい形のネットワークです” 開催された境町では市長のリーダーシップのもと、子育て支援などの政策を次々に打ち出し、立て直しが急速に進んでいます。また各地の自治体の方、エネルギーを扱う企業、研究者によってさまざまな取り組みの報告がありました。 パワーシフト・キャンペーンは日頃から自治体、地域が主体となった脱炭素に関する取り組みに注目をしています。本大会で報告された内容のうち、持続可能な地域に向けた取り組み、とりわけ脱炭素社会をどう作っていくのか?地域新電力の役割は何か?について報告をしたいと思います。 1.さまざまな地域課題と自治体での先進的な取組 各地で少子高齢化、財政問題、温暖化などによる災害発生など様々な地域課題があります。本大会でも注目すべき各地での取り組み事例が報告されました。 課題①人口減少問題。鉄道駅がなく高齢者が免許返納できない。若者が東京にアクセスしにくい解決①東京への高速バスを運行。無人自動バスを運行。運営費は補助金とふるさと納税を活用し町の指定管理費はゼロ。(茨城県境町) 無人バス視察の様子 無人バスオペレーションセンター 課題②人口減少。少子高齢化。解決②子育て支援では保育用品の補助、第三子出産で50万円補助。新規移住で賃料1.5万円補助など。(茨城県境町) 課題③建築物のエネルギー消費解決③学校断熱ワークショップを開催する。全部の教室をやろうとしなくてもまず一つやることを体験し、意識が変わるという環境教育としての効果がある。学校はかかわるステークホルダーが多い。地元の企業の卒業生が応援や寄付をしてくださる。またNPO、職員、学生、親なども関わるという効果が大きい。(報告:エネルギーまちづくり社 内山章) 課題④農業、農村社会の課題解決④牛の糞尿を使ったバイオガス発電を行い、発電で余った残渣は畑にまく。(上士幌町 ゼロカーボン推進課 木川陽介) 課題⑤治安、健康、学力などの課題解決⑤解決策のひとつとして貧困対策を実施。生活困窮者の方が地域活動の大人とかかわっていただく機会を設けることで将来のレジリエンス力が高くなる。(東京都足立区 SDGs未来都市推進課 伊東貴志) 課題⑥災害応急住宅の解体に伴う環境負荷解決⑥木造モバイル建築ユニットを用いる。断熱性能がある応急住宅で、通常時には学習支援、食堂などに活用でき、60~70年利用できる。災害時に応急的にプレハブ住宅を建てるのではなく長期的に活用することを考えた運用が大切。(報告:立教大学 長坂俊成) 課題⑦気候変動への無関心解決⑦滋賀県気候変動適応センターは国立環境研究所と連携して地域の気候変動適応について活動を行う。市民参加による地域の気候変動の顕在化を可視化する。(報告:滋賀県琵琶湖環境科学研究センター 木村道徳) 課題⑧気候変動への無関心解決⑧魅力的な地域にするという目的でアヤセ未来会議を開催。市民の方々が開催。区は準備するだけで良く、市民が主体的に交流を開始したり、youtubeチャンネルを作るなどした。(東京都足立区 SDGs未来都市推進課 伊東貴志) 2.自治体の脱炭素政策、地域新電力の活用の事例 脱炭素政策と地域新電力の活用事例についても、報告がありました。 活用①ソーラー会社を民間で設立することで補助金を活用できた。売電額のうち年2000万円を町に寄付。活用②役場の屋根がカーブしているので太陽光パネルが置けなかったが、フレキシブルモジュールを利用して設置を計画している。(茨城県境町) 活用②今後地域新電力の設立を計画中(茨城県境町) 活用③地域新電力たんたんエナジー、金融機関などで地産地消電力のためのスキームを作った。さらに市民出資を促すことで市民に関わっていただき、再エネへの信頼を高める効果を狙った。(福知山市 産業政策部 エネルギー・環境戦略課 足立訓章) 活用④まちみらい製作所が進めるe-cycleは地域の再エネを買い取り、直接売るのではなく、インバランスのリスクなどを解消したものを地域新電力へ提供するサービス。約20箇所に提供中。(まち未来製作所 青山英明) 活用⑤一般住宅向け太陽光補助金制度を1件300万円で実施した。3日で上限に達し好評だった。また太陽光パネルを設置していて、かつ地域新電力のかみしほろ電力と電力契約をした場合に、10万円の商品券を支給。(上士幌町 ゼロカーボン推進課 木川陽介) 3.持続可能なまちづくり、脱炭素政策を進めるために 本大会ではたくさんの事例が報告されましたが、どのような考えや理念でそれらを進めたのでしょうか。私が印象に残っている言葉をいくつか紹介します。 「議会、職員、市民にやっていること、考えていることを共有し、みんなが同じ方向を向いている状態を作るのが大切」(茨城県境町) 「自治体は(財政的な)結果を出さなければならないが、それだけを考えたくない。それが住民目線での活動だと思う。」(東京都足立区 SDGs未来都市推進課 伊東貴志) また地域の再エネを増やすことについて 「再エネは地域SDGsの観点でもさまざまなシナジー効果がある。再エネ導入は地域と長期的に共生する。」(松原 弘直(NPO法人環境エネルギー政策研究所 理事)) 「電力を地域新電力への切り替えを進める際には、脱炭素化のメリットだけを言うのではなく、他にどんないいことがあるのかを盛り込み、アピールすることが大切。」(福知山市 産業政策部 エネルギー・環境戦略課 足立訓章) 「地域新電力の役割は地域の豊かさがゴールである。」(まち未来製作所 青山英明) 自治体が抱える課題の解決と、脱炭素政策は密接に関わっていることが、本ネットワークの発表でも明らかになりました。またここで発表された自治体の方々は、市民のためになる取り組みを考え実行している様子がわかります。それらの合意形成の仕方の工夫などは、とりわけ理解が進みにくい脱炭素政策を進めるにあたって一助になると思います。 また地域に根差した地域新電力の役割も重要です。これは脱炭素先行地域に選定された74の地域のうち半数以上の39地域が地域新電力との関り(計画も含む)をしていることからも伺えます*1 本大会では自治体がさまざまな地域課題に対する取り組みをしていることがわかりました。それらの取り組みの一部を地域新電力が担う、そのような事例はこれからも増えていくのではないかと感じました。 パワーシフト・キャンペーンでは、今後も自治体が進める地域課題対策と脱炭素政策に注目し、対策の必要性を広めていきたいと思います。 (2023年12月) *本イベントへの参加は地球環境基金の助成を受けて実施させていただきました (参考) *1(報告)11/19市民・地域共同発電所全国フォーラム2023 in 京都https://kikonet.org/kiko/wp-content/uploads/2023/11/231119_yoshida.pdf *2 7/19 ウェビナー「脱炭素地域づくりと地域新電力~地域の経済循環をめざして~」https://power-shift.org/230719_webinar/ *3 2/16 シンポジウム「脱炭素地域づくりと地域新電力~地域の経済循環をめざして~」https://power-shift.org/230216_symposium/