2023年1月13日
パワーシフト・キャンペーン運営委員会
2022年12月27日、関西電力の小売部門が2016年から現在まで送配電子会社の顧客情報を閲覧できる状態であったことが報道で明らかになりました(*1,2)。「過去1週間の記録で、1327件の顧客情報を関電の営業部門の担当者ら329人が閲覧していた」とのことで、自由化開始から6年半以上にわたってこの状況が続いていたというのです。
(1月16日追記)
1月13日には、東北電力でも同様の顧客情報漏洩が明らかになりました(*6,7)。
また、関西電力と関西電力送配電株式会社が電力ガス取引監視など委員会に提出した報告書では、2022年9月から12月までの3か月間に限っても、730人が1万4657件の新電力の契約情報を閲覧していたとのこと。(*8)
(1月19日追記)
1月18日には、九州電力でも同様の顧客情報漏洩が明らかになりました(*9,10)。
(1月23日追記)
1月20日には、四国電力でも同様の顧客情報漏洩が明らかになりました(*11,12)。
(1月30日追記)
1月27日には、中部電力、中国電力でも同様の顧客情報漏洩が明らかになりました(*13,14,15)。
送配電子会社による情報漏洩は電気事業法違反
電力システム改革によって、各大手電力の送配電部門は2020年度までに「子会社化」し、中立、公平な運営が求められています。にも関わらず、少なくとも関西電力で送配電部門の「中立性」「公平性」どころか小売部門と情報が共有されていました。そのような行為を禁止する電気事業法に違反し(*3)、「自由競争」とはほど遠い状況であったことが明らかになりました。電力システム改革・電力自由化に真っ向から反する不正です。重大な問題で、本来関西電力は営業停止とされてもおかしくない事態です。
小売部門による「取り戻し営業」も法令違反
2016年から2018年頃にかけ、大手電力の「取り戻し営業」が大きな問題となりました。需要家から新電力に切り替えの申し込みをしたのち、大手電力から需要家に大幅な値引き提案があり、結局切り替えをやめて大手電力に戻る事例が相次いだ、というものです。
パワーシフト・キャンペーンでも4年前に発信をしていますが(*4)、当時多くの新電力から「取り戻し営業」によって顧客を奪われ、大変な苦労をしているという話がありました。これは自由競争の範囲なのか、経産省電力・ガス取引監視等委員会に抗議をしたが受け入れられなかったという声もありました。
2018年12月には「電力小売営業に関する指針」が改定され、スイッチング情報を得たあとの「取り戻し営業」について、「問題のある行為」すなわち法令違反だとされています(*5)。
公正取引委員会は大手電力の不正に厳正な対処を
12月14日、公正取引委員会が、大手電力と新電力の競争状況について調査を行うと発表しました。今回判明した関西電力だけでなく他社でも同様のことが起きていないか、十分に調査する必要があります。
また、12月1日には関西電力を中心としたカルテルも明らかになっています。公正取引委員会は、このような大手電力の独占・寡占、不正の状況に大きくメスを入れるべきです。
送配電部門の「法的分離」は不十分、所有権分離が求められる
今回の関西電力の不正からも、電力システム改革における送配電部門の「法的分離(子会社化)」では、中立性、公平性の担保が不十分であることが明らかとなりました。電力システム改革の趣旨の一つである「需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大」を貫くためにも、改革をやり直し、送配電部門の所有権分離に踏み込むべきです。
パワーシフト・キャンペーンはこれまで、大手電力が新電力に比べ圧倒的に優位に立っている状況を指摘してきました。今回、小売と送配電が実質的に分離できていないことやカルテルなど、明確な法令違反が明らかになりました。電力システム改革が形骸化している状況を大いに危惧し、改革の見直しを求めます。
注)
*1 関西電力送配電株式会社によるプレスリリース
小売顧客情報の漏洩に係る報告徴収の受領について (kansai-td.co.jp)
関西電力株式会社によるプレスリリース
新電力顧客情報の取扱いに係る報告徴収の受領について (kepco.co.jp)
*2 関連する報道
新電力の顧客情報漏洩 関西電力、送配電子会社から小売部門: 日本経済新聞 (nikkei.com)
関西送配電・新電力顧客情報閲覧問題で会見/年明けに詳細調査結果、再発防止策も | 電気新聞ウェブサイト (denkishimbun.com)
関電社員ら329人、顧客情報を不正に閲覧 1週間で:朝日新聞デジタル (asahi.com)
関電と送配電子会社の顧客情報漏洩 個人情報保護委も報告求める:朝日新聞デジタル (asahi.com)
*3 送配電部門の法的分離に関する電気事業法の改定(2015年)
「電気事業法等の一部を改正する等の法律」(平成27年6月17日成立)について|電力システム改革について|資源エネルギー庁 (ndl.go.jp)
*4 再エネ新電力の危機―大手電力会社による「取り戻し営業」と水力によるRE100メニュー(2019年1月31日)
https://power-shift.org/release_190131/
*5 「電力の小売営業に関する指針」の改定(2018年12月)
「電力の小売営業に関する指針」の改定に関して建議いたしました (meti.go.jp)
*6 東北電力株式会社によるプレスリリース
新電力等のお客さま情報の取り扱いに係る報告徴収の受領について| 東北電力 (tohoku-epco.co.jp)
*7 報道記事 東北電力でも顧客情報漏洩 経産省、各社に緊急点検要請: 日本経済新聞 (nikkei.com)
*8 関西電力株式会社、関西電力送配電株式会社によるプレスリリース
新電力顧客情報の取扱いに係る調査結果の報告について(電力・ガス取引監視等委員会からの報告徴収への報告) (kepco.co.jp)
小売顧客情報の漏洩等に係る報告について (kansai-td.co.jp)
*9 九州電力株式会社、九州電力送配電株式会社によるプレスリリース
https://www.kyuden.co.jp/press_h230118-1.html
https://www.kyuden.co.jp/td_press_2023_230118.html
*10 報道記事
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA187YC0Y3A110C2000000/
*11 四国電力株式会社、四国電力送配電株式会社によるプレスリリース
https://www.yonden.co.jp/press/2022/__icsFiles/afieldfile/2023/01/20/pr003.pdf
https://www.yonden.co.jp/nw/press/2022/__icsFiles/afieldfile/2023/01/20/npr002.pdf
*12 報道記事
新電力の顧客情報不正閲覧、四国電力でも 大手4社目: 日本経済新聞 (nikkei.com)
*13 中部電力株式会社、中部電力送配電株式会社によるプレスリリース
新電力等のお客さま情報の不適切な取り扱いについて|プレスリリース|中部電力ミライズ (chuden.co.jp)
託送業務で知り得た情報の漏えいに係る報告徴収の受領について – ニュース|中部電力パワーグリッド (chuden.co.jp)
*14 中国電力株式会社、中国電力送配電株式会社によるプレスリリース
中国電力ネットワーク株式会社が管理するお客さま情報の閲覧について|プレスリリース|中国電力 (energia.co.jp)
お客さま情報の取り扱いに関する電力・ガス取引監視等委員会 および個人情報保護委員会への報告について | 中国電力ネットワーク株式会社 (energia.co.jp)