電力市場価格高騰で、再エネ系新電力が危機的状況!消費者としては何ができるの?

*2月1日追記 「切り替えは待って」は解除!
1月中旬に深刻な状況となっていた電力市場価格の高騰について、1月最終週からはようやく価格が落ち着きました。
市場で取引される電力量も、12月末から1月中旬にかけて2割ほど減っていましたが回復、大手電力から市場に供給される電力量がしぼられていたのが元に戻ったためと考えられます。

再エネ新電力各社、ようやく一息つきつつも、1月の打撃をどうリカバーするか、引き続き大変な状況です。
下記の記事で、「切り替えは待って」としていましたが、今改めて切り替えを呼びかけましょう。
再エネ新電力をささえる声を大きくするとともに、大手電力が市場支配力を持っている状況に対して声を上げていきましょう。
2月5日のイベントでも、この問題にフォーカスします。(アーカイブも公開予定)
https://power-shift.org/210205_event/

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12月下旬から、電力の市場価格が高騰しています。電力不足?という心配の声もありますが、実は日本全体で電力不足ということではありません。
大手電力などから電力市場への供給量がしぼられたことで、電力市場価格が高騰、また市場価格に連動しているFIT電気の仕入れ価格も高騰し、その打撃を一番受けているのが、再エネ新電力や地域新電力なのです。

1.何が起きているか
(1)一時的な電力供給量の減少
(2)12月下旬からの電力市場価格の高騰
2.再エネ新電力への影響は?
(1)仕入れ価格への直接的な影響
(2)FIT電気の仕入れ価格が、市場価格に連動して高騰
(3)市場連動性の価格設定の場合は、顧客に直接的な影響
(4)電力会社からの情報発信や対応事例
3.みなさんへのお願い
(1)再エネ新電力への切り替えは、価格高騰が落ち着いてから
(2)すでに再エネ新電力に切り替えている人は、節電と、電気の使い方の工夫を
(3)FIT買取期間の終了した太陽光発電発電は、再エネ新電力へ
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1.何が起きているか
(1)一時的な電力供給量の減少
コロナ禍などを要因にLNGの輸送が滞ったことや、厳冬による電力需要の高まりなどを背景に、北海道、北陸、関西、四国など地域によっては供給力に対する最大電力需要が95%を超えるような日が出てきました。
ただし、日本全体で電力が不足しているわけではありません。たとえば東京電力エリアでは、80~90%程度と余裕のある状況です。今後のエネルギー政策で「原発や石炭火力も必要」という話ではありません。

天然ガス・LNG最新動向―スポットLNG価格急騰!2020年トラブル頻発とパナマ運河制約で激変迫るLNG物流―(JOGMEC石油・天然ガス資源情報ウェブサイト、2020年12月25日)

(2)2020年12月下旬からの電力市場価格の高騰
しかし上記のような状況で、電力市場(日本卸電力取引所:JEPX)に供給される電力量が減りました。
市場調達量と実際の使用量との差が生じた際の精算(インバランス料金)は市場価格より高くなっています。そのため、調達量が足りなくなることをおそれ、高値で札を入れる事業者があったため、市場価格が高騰しました。1月13日には、夕方など一時250円近くにまで高騰がみられました。
1月15日、経済産業省がインバランス料金の上限を200円とすることを発表したため、市場価格も200円が上限となりました。「少しはましになった」という声はあるもののいまだに深刻な状況であり、少なくとも2月まではこの状況が続くだろうと言われています。
この異常な価格高騰は「市場の問題」であると言えます。上限価格を設定するなど、対策は可能なはずです。経済産業省やJEPXには、具体的な再発防止策を検討するとともに、現在生じている不合理な状況への対応や極端な損失に対する補償が求められます。地域を限定した節電要請などもできたはずです。

経済産業省資料より

スポット市場価格の動向について(電力ガス取引監視等委員会、2021年1月19日)
・事業継続危うし、新電力から「電力市場の正常化」を求める悲痛の声(日経エネルギーNext、2021年1月17日)
2021年電力ひっ迫(続報)1月の電気料金が10倍に!? 市場連動型契約の80万件はどこへ 電力取引価格一時250円/kWh超え、異例な高騰続く:各社、国の対応まとめ(Energy Shift、2021年1月14日)

2.再エネ新電力への影響は?
(1)仕入れ価格への直接的な影響
再エネ新電力や地域新電力は現状、自前の電源を多くは持たず、電力市場からの仕入れの割合が高くなっています。その部分は、直接的な影響を受けています。消費者の電気代の値上げをしない場合、電力会社がその値上げ分を赤字として背負うことになります。電気を売れば売るほど、毎日赤字が募る状況であり、深刻な経営危機に直面している状況です。
一方、大手電力会社は、自社の発電所や自社が直接契約する発電所を多数持っており、電力市場に電気を供給している側です。価格高騰の影響は受けず、むしろ高騰する市場価格によって利益を得ているとも言えます。大手電力の独占にメスを入れ、自由化以前に全消費者の負担で造られた発電所の電気が電力市場で取引されるようにするなど、現状では不十分な電力システム改革を進めていくことが必要です。
STOP! 原発・石炭火力を温存する新たな電力市場ーリーフレット( eシフト)より

(2)FIT電気の仕入れ価格が、市場価格に連動して高騰
2017年のFIT制度改革により、FIT電気の買取義務者は送配電事業者となり、あわせて小売電気事業者がFIT電気を調達する際の価格が、市場価格に連動することとなりました。そのためFIT電気の仕入れ価格は、同様に高騰し、FIT電気を重視する再エネ新電力には大きな打撃となっているのです。
一方発電所が受け取るのは、これまで通りの固定価格のみです。その差分が送配電事業者にとどまるという状況になっており、これは明らかに制度設計の不合理です。
再エネ新電力や地域新電力などのネットワークは、このFIT電気の仕入れ価格に上限を設けるべくということ、また送配電事業者にとどまっている利益を還元すべきということを働きかけています。

新電力56社共同で、卸電力市場価格の長期高騰に関して経産省に要望書を提出 (みんな電力、2021年1月18日)
・地域新電力32社からも要望書が提出されました。(2021年1月18日)

(3)市場連動性の価格設定の場合は、顧客に直接的な影響
消費者の電気料金を、市場価格に連動させている会社もあります。パワーシフトで紹介しているなかでは、テラエナジーがあります。2020年はコロナ禍の影響もあり、市場価格が低く、電気代が安い時期もありましたが、12月以降は、電気代が上がることになります。今後どうなるか、現時点で見通すことは難しいですが、少なくとも1月2月中は、節電や電気の使い方の工夫が必要です。

(4)電力会社からの情報発信や対応事例
・テラエナジーは、状況説明と協力依頼
「電力市場高騰による電気料金への影響について」
・みんな電力は「電源コストを6か月平均で調整」
卸電力市場の価格高騰に伴う2月以降の電気料金への影響と対応につきまして(個人・法人低圧契約のお客さま※) / 「顔の見える電力™」のみんな電力 (minden.co.jp)
・グリーンピープルズパワーは、値上げはせず増資で乗り切る
日本卸電力取引所(JEPX)の市場価格高騰について | Green People’s Power

3.みなさんへのお願い
(1)再エネ新電力への切り替えは、価格高騰が落ち着いてから
この異常事態のもとでは、お客さんが増えるほど、電力会社の赤字が膨らんでしまう状況です。パワーシフト・キャンペーンでも、価格高騰が落ち着いてからの切り替えを、呼びかけます。すこし時間がありますので、関心を持った方は、どこの電力会社にするかゆっくり考えておきましょう!

(2)すでに切り替えている人は、節電と、電気の使い方の工夫を
朝7~9時と夕方16~22時は、電力使用量が上がり特に高い価格(200円前後)となっています。電気を多く使う家事などは、少しでも価格の低い時間帯にしたり、ガスを使ったり、できるだけ工夫してみましょう。ただし健康優先で、必要な暖房は無理せず使ってください。
JEPXのウェブサイトを見ると、翌日の電気の市場価格が示されています。

JEPX(一般社団法人 日本卸電力取引所)

例:2021年1月21日受け渡し分の価格(日本卸電力取引所ウェブページより)

コロナ禍での冬季の省エネリーフレット(経済産業省)

(3)FIT買取期間の終了した太陽光発電は、再エネ新電力へ
再エネ電力会社にとって、卒FITの家庭の太陽光発電は重要な「再エネ電源」です。ご自宅の屋根の太陽光発電、FIT期間が終了しましたら、ぜひ再エネ新電力各社に切り替えください。
・スイッチングのすすめー買電も売電も
https://power-shift.org/solar-fit-2019/

(2021年1月22日、パワーシフト・キャンペーン運営委員会)