再エネ新電力の切実な声!「市場価格高騰の経営への打撃」に関するアンケート結果

2021年秋からの電力市場価格高騰は、1月、2月には、通常の約3倍を超える日も出てくるなど、深刻な影響が続いています。

今季、市場価格が高騰している理由や問題点の詳細はコチラ(1月20日記事)▼
https://power-shift.org/220120_jepx/

市場制度の不備を最大の要因とする価格高騰の甚大な影響が、「自己責任」という形で新電力、特に再エネを重視する新電力に押しつけられています。

この電力市場高騰の厳しいところは、消費者が支払う電気代の単価が一定である場合が多いなかで、大幅な高騰分のほとんどを再エネ新電力が吸収せざるをえないところです。仕入れ価格が販売価格より高くなるという異常事態になれば、売れば売るほど損失が増えます。ある再エネ新電力は大きな損失を抱え、ついに低圧小売り事業から撤退、再エネ事業をあきらめざるを得ない状態になりました。

このような再エネ新電力の声を可視化するために、パワーシフト・キャンペーンで紹介している電力会社に緊急アンケート調査を実施しました。

アンケート
「昨冬~今冬にかけての電力市場価格高騰についてどう思いますか?」
実施期間: 2022年1月25日~2月8日
対象: パワーシフト・キャンペーン参加の電力会社
回答数: 12社

<回答した電力会社の情報>
〇料金メニュー:
*固定単価制:市場価格高騰分を会社が負担
*市場連動制:市場価格が全てまたは一部が電気料金に連動している。電気料金の一部が市場価格に連動しているプランを含む

〇FIT電気の割合(最低/平均/最高):3%/49%/90%
〇電力市場からの調達割合(最低/平均/最高):0%/28%/56%
*実績値もしくは計画値

 

<回答>
Q1. 経営へのインパクトはどの程度でしょうか?


Q2. 電力調達や電力需給について、今後どのような対応を実施もしくは検討していますか。(複数選択)

※現在の制度では、FIT電気の調達価格は、市場価格に連動することとなっています。

 

Q3. 経営面について、今後どのような対応を検討していますか。(複数選択)

 

Q4. 価格高騰を起こしている現在の市場制度についてどう考えますか?

Q5. 特に改善を要望したい点を教えてください。ほかご意見があればお書きください。

●FIT電気の仕入れ価格が市場価格に連動するしくみを見直すべき
・FIT由来再エネ電力が化石燃料の原料高で市場に連動してしまうことについては、そもそも回避可能費用として市場が安定していることが前提であったのでこれについてはリスクを緩和する仕組みを手当する必然性があります。
・FIT電源の卸売市場価格との連動が疑問です。
・弊社は太陽光発電のEPC事業者で、自社で施工した太陽光発電所の電気を届けたいと考えております。FIT電源が市場連動にならないようにしてもらいたいです。現状他社から融通してもらっているFIT電源もありますが、市場連動価格での融通なので今年度で契約を終了する予定です。自社のFIT太陽光電源は継続する予定です。
・調達においてFIT電気の特定卸契約の価格をJEPXのスポット価格で取引しているが、これは一定額に修正すべき。そもそも、元は太陽光発電で作られた電力であるので、JEPXで取引されるkwh(電力量)の原価とはかけ離れていて、意味が無い。

●大手電力と新電力との間の格差を是正すべく対策をとるべき
・本来の目的、電力自由化の意味を考え、今回の様などうにもならないような高騰に対応できる措置を検討いただきたい。結局は顧客への迷惑が大きくかかる
・大手電力と新電力で電源調達力に極めて差が大きいことを解消していかないと、今後も同様の問題は起こると想定しています。
・10月からの市場価格上昇にしても、その要因等が情報開示不足または、非常に遅いため、新電力全体が打撃を受けてから対応せざるを得ない状況を改善すべき。
・バランシンググループに所属しており親BGから固定価格で融通してもらっていますが、来年度より融通単価が上がることを言われており、現在親BGよりも安い相対電源を探すのに四苦八苦しています。
・新電力として安定した容量市場への改善を強く望みます。容量市場に頼らない方策を進めないと無駄な制度になっていくのではないか。

<パワーシフト・キャンペーンから一言>

このアンケート結果からわかるように、数ヶ月間にわたって続いている市場価格の高騰により、すべての再エネ新電力の経営に大きな影響があると回答しています。事業の存続にかかわる影響もみられます(Q1)。
リスクヘッジとして市場価格に左右されない非FITの再エネ電源に調達をシフトする動きがみられますが、一部FIT電気の調達を減らして、大手電力や他の新電力などからの調達にシフトするなど「再エネ重視」というビジョンや方針にも大きな影響が出ています(Q2)。

「事業の縮小や整理も含めて検討」という切実な声も聞こえています(Q3)。

この状況に対し9割の再エネ電力会社が「大きな問題であり経産省は早急に対策すべき」とし(Q4)制度自体の問題点を指摘します(Q5)。特に、再エネ新電力が重視するFIT電気の調達価格が市場価格に連動している状況については、一刻も早く改善されなければなりません。

化石燃料への依存と大手電力が市場を実質的に支配している状況が続くかぎり、今後もこのような市場価格高騰が起こることは十分に考えられます。再エネ新電力の将来は非常に厳しい見通しで、これでは地域にねざした再エネ社会へのシフトも大きく妨げられてしまいます。
パワーシフト・キャンペーンでは、引き続き状況に注目し、制度の改善や再エネへの支援を呼びかけていきたいと思います。

(2022年2月 パワーシフト・キャンペーン運営委員会)