<参加報告>バイオマス発電の問題点を考える~輸入燃料、放射能汚染木材燃やしていいの?

<報告概要>
「バイオマス発電の問題点を考える~輸入燃料、放射能汚染木材燃やしていいの?」参加報告

_________________________________

とき:2018/05/13(日)14::00~16:30

ところ:東京しごとセンター

主 催:国際環境 NGO FoE Japan 、ちくりん舎、福島老朽原発を考える会、放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会

参加者:約50名

内 容:
①再生可能エネルギーの持続可能性とは?
・・・満田夏花/ FoE Japan

②バイオマス発電の現状と課題
…泊 みゆきさん/バイオマス産業社会産業ネットワーク理事長

③田村市で計画されているバイオマス発電事業
・・・和田央子/放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会

④燃やしてよいのか?放射能汚染木材
・・・青木一政/ちくりん舎

_________________________________

【概要報告】

①再生可能エネルギーの持続可能性とは? 満田夏花/ FoE Japan

低迷する原発と急成長する再生可能エネルギーの日本において、再エネ開発をめぐる環境社会問題が発生している。そのひとつにバイオマスエネルギーがあり、原料の生産現場における環境社会問題、海外から輸入した原料の持続可能性、パーム油のように食料との競合性および汚染木材の燃焼による放射能拡散の懸念がある。2018/4/13に「再生可能エネルギーの持続可能性に関するFoE Japanの見解」を出した。

http://www.foejapan.org/energy/library/180413.html

 

②バイオマス発電の現状と課題  
   …泊 みゆきさん/バイオマス産業社会産業ネットワーク理事長

バイオマスは廃棄物、木質、バイオ燃料など種類が多く、関連する分野や省庁が多岐にわたるためかなり複雑で全体像を把握するのが難しい。他の再エネとは異質であり、良し悪しの評価はきちんとなされるべきである。

FIT制度の問題点として、①規模別になっていない。そのため大規模な設備導入によって利益追求を狙うとどうしても海外輸入原料に行き着く。②パーム油などは持続可能性基準がない。③コジェネ誘導のしくみが入っていない。④データ公開が不十分である。があげられる。

2017年3月には価格低下懸念に反応して、大量のパーム油、PKS(アブラヤシ核殻)が申請、認定された。しかし2017年度FIT調達価格等算定委員会での議論では、2018年度以降1万kW以上一般木質バイオマス発電に入札制度導入。またパーム油発電の燃料は非認証油と分離され、RSPO認証内を求めた。さらにPKSは2017年度の輸入実績量が約140万トンにも達し、それに対する供給の余裕はそれほどないため、頭打ち状態になると思われる。またFSC認証木材の適用もあり、駆け込み認定はされたが実際に稼動するのは少ないと思われる。

あるべきFIT制度という考え方をすると、規模別導入で、2万kW以下と区別する。石炭混焼をやめる。CO2排出基準を入れるなどが良い。

再エネというのは設備所有、ファイナンス、燃料供給が地域で回さないと地域経済への恩恵が少ないため、輸入型バイオマスではエネルギー自給にならず、本来の姿ではない。また輸送距離が長くなるとCO2削減効果が少なくなる。パーム油では地元での土地、労働など人権等の問題もある。従ってPKSは廃棄物利用とはいっても地元で使うべきであり、本来輸入して使うものではない。

バイオマスのエネルギー利用は、熱約半分、発電1/4、残り輸送燃料であり、基本的に熱利用を行うべき性質のものである。バイオマスは発電しなくてはという考えをやめて地元で熱利用をすることを基本とすべきである。

木質バイオマスのエネルギー利用を考えるときには、事業性、利用効率、燃料調達、地域貢献を考える。例えば熱利用するならばほぼすべての項目が満足するが、大規模混焼では利用効率はNGであり、その他も内容によってはNGとなるため注意すべきである。

 

③田村市で計画されているバイオマス発電事業 和田央子/放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会

福島県内のバイオマス発電は5箇所で、そこに田村バイオマスエネジーが計画された。住居、こども園まで数百mの近さ。小型バイオマス発電、木材加工施設計画もある。また風力発電建設で出る伐採木をバイオマス燃料として使用するのではないかとの心配がある。

森林除染は、環境省は生活圏20m以内を里山除染と称し、東電へ求償。しかし20m範囲外は林野庁、県、林業関係者では奥山除染と称し、皆伐、再造成を狙っている。そこで出る廃棄物が問題である。またふくしま森林再生事業では、間伐を行い、その木材はバイオマス発電へ利用するとしている。20m圏内は除染と言い、20m外は間伐といい、それをバイオマス発電で燃やすという都合の良い、矛盾したことが実施されている。本来は森林には手を付けずに放射能の自然減衰を待つべきと考える。国と東電が責任回避したい思惑を感じる。

 

④燃やしてよいのか?放射能汚染木材 青木一政/ちくりん舎

バイオマス発電展の基調講演からバイオマス発電の本音を垣間見た気がする。バイオマス発電の売り上げ安定性はOK、設備安定性もOK、燃料供給性が不安定NGであるとのこと。燃料供給は、間伐材だけでは足りないので、伐採する。山林はバイオマスの畑と見るべきとの話であった。これらの話には違和感を感じざるを得ない。

汚染木材を燃焼させれば1μm前後の飛灰が出る。焼却場に使用されているバグフィルタでは取れないので飛散する。バグフィルターは99%取れるということが言われているが、その根拠は取れる量を重量で測っており、大きなものが取れるから、重量でほとんど取れていると言っているのに過ぎない。1μm前後のものは抜けてくるため、重量で測っても意味がなく、数を言っていないのはおかしい。

 

*各スピーカの方の発表資料はこちらでダウンロードできます。

http://www.foejapan.org/energy/evt/180513.html

*当日の映像FFTV

https://www.youtube.com/watch?v=K_kFnK2in9Y&t=58s

 

【聴講感想】
バイオマスは再エネの1つで良いものだ、と単純に捉えることができないことがわかった。

FIT制度などの制度が不十分であり、制度に合致していれば持続可能性がなくとも利益優先で計画してしまう危険がある。実際にそういう方向に向かっている実態を強く感じた。また国や東電などの思惑によりバイオマス発電事業が、悪い利用のされ方になりそうになっていると感じる。今この問題を可視化することで、これからバイオマス発電に関わる事業者の方々、一般の方々が知らずのうちに入り込むことがないように願う。大規模なバイオマス発電所は、事業性を成立させるために地域間伐材、廃棄物など「良い燃料」以外の海外パーム油等の「悪い燃料」を投入せざるを得ないようだ。従って、バイオマス発電に関わる際には総合的な持続可能性を検討して判断することが重要であると思う。(田渕 透)

(2018年5月)