5/29まで「でんきの市場価格高騰」問題にパブコメを! 

「でんきの市場価格高騰」問題について、4月30日から5月29日(23時59分)までパブリックコメントが呼びかけられています。

2020年度冬期の電力需給ひっ迫・市場価格高騰に係る検証中間取りまとめ(案)及び一般送配電事業託送供給等約款料金算定規則の一部を改正する省令案等の概要に対する意見募集|e-Govパブリック・コメント
(注意!「意見公募要領」のPDFを開いてからでないと、「意見提出」に進めません)

パワーシフト・キャンペーンでは、3月から署名を呼びかけ、4月末には17000筆以上の声を経済産業省と内閣府に提出しました

その後、5月14日に原子力資料情報室から興味深い分析が発表されました。関西電力の原発(大飯3号機と高浜3号機)の再稼働がトラブルによって遅れたことが、LNGの在庫逼迫と市場価格高騰の直接的な要因になったのではないか、というものです。

経済産業省のこれまでの調査では、この点についてはほとんど検証されていません。審議会の中でも、このような電力不足を回避するためにも原子力や石炭火力も必要、という本筋からはずれた議論もありました。

今回のでんきの市場価格高騰で最も大きな被害を受けたのは、再エネを重視する新電力です。下記のような点を、ぜひ一言でもパブコメに出していきましょう!

  • パブコメのポイントは

1.関西電力の原発(高浜3、大飯3)の再稼働が予想外に遅れたことが、LNGの在庫切れの大きな要因となった可能性がある。このことについて、改めて検証を行うべき。原子力など大規模集中電源への依存が需給逼迫のリスクにもなる。

2.特に再エネ新電力(FIT電気や市場電気の割合が高い)が大きな損失を抱えることになった。今回の価格高騰は制度の不備のため、補正をして影響を受けた事業者に還元をするなどの措置が必要である。

  • パワーシフト・キャンペーンからのパブコメ

・(10ページ)関西電力の原発(高浜3、大飯3)の再稼働が予想外に遅れたことが、LNGの在庫切れの大きな要因となった可能性がある。このことについて、改めて検証を行うべきである。

・(48~50ページ)今回の事象で、特に再エネ新電力(FIT電気や市場電気の割合が高い)が大きな損失を抱えることになった。今回の価格高騰は制度の不備のため、市場価格およびインバランス料金の算定について補正を行い、送配電事業者の余剰利益を影響を受けた小売電気事業者に還元をするなどの措置が必要である。

・(79~80ページ)FIT電気の送配電買取(FIT特定卸供給)についても同様で、余剰分はFIT賦課金の軽減に充てられるとされているが、補正をおこなって小売電気事業者に還元すべきである。

・(83~84ページ)原子力のような大規模集中型電源への依存が大きなリスクであることが改めて明らかとなった。容量市場によって、原子力や石炭火力などを温存することは、むしろ市場価格高騰のリスクを高めてしまう。容量市場を白紙から見直し、戦略的予備力(公的主体が決定した、緊急時に不足すると見込まれる容量の電源を、系統運用者が予め確保するための制度)など別の方法を検討すべきである。

  • 原発の稼動遅れが原因になった?

当初計画では、2021年1月15日ごろには高浜原発3号機、大飯原発3、4号機の3基が稼動している予定でした。大飯原発3号機で2020年9月に蒸気発生器の傷が見つかり、停止が長期化しました。さらに、12月15日に高浜原発3号機も伝熱管確認(高浜4号のトラブルに連動)のため再稼働が難しくなりました。この後、関西電力から電力市場への販売量が急激に減ったため、市場価格高騰の直接的な要因となった可能性があります。

1月15日ごろに原発が3基稼動しているシナリオだったはずが、1基になりました。LNGは輸送などの関係で2か月前に調達する必要があります。大飯3号機のトラブルを受けて20万トン追加調達したとのことですが、高浜3号機も動かせないとなれば、まったく足りない量でした。過去にも、北海道苫東厚真地震や、福島第一原発事故の際などに、類似のことが起こっています。原発は「ベースロード電源」として期待できるというよりも、むしろ不安定な電源というのが現実です。

▼調査レポート「原発の定期点検長期化が卸電力市場価格高騰の原因か ―巨大電源の隠れたリスク―」(原子力資料情報室、2021年5月14日)
https://cnic.jp/39079

  • 電気の市場価格が高騰?わたしたちとどう関係してる?

電気の市場価格と聞くとみなさん聞き慣れないかもしれません。これは小売会社が「電気を仕入れるときの価格」にあたります。新電力の多くは、発電所から直接電気を買ったり、別の電力会社から買ったりするほかに、電力市場からも電気を仕入れて販売しています。
この仕入れ価格に、送電線を使う「託送料金」や小売会社の「経費」などが加わって、わたしたち利用者が支払う「電気料金」となります。

仕入れ価格が上がると、一般的には最終価格である、わたしたちが支払う電気料金が上がります。

仕入れ価格が電気料金に連動する価格体系をとっている新電力の利用者は、冒頭のような値上がりをしました。
うちは上がらなかった、という人は、契約している新電力が、数千万・数億円単位の値上がり分を抱えることとなったのです。

同じことがまた起こったら、新電力はまたその損失を抱えられるかわかりません。

一方、大手電力は逆に市場に電気を売っている側です。エリアによって多少の影響もありましたが、新電力の打撃とは比べ物になりません。

  • 市場を使っていないのに市場価格を取られた?!

最大の被害者は、供給している新電力(再エネ新電力)です。FITは「固定価格買取制度」とも呼ばれ、再エネ発電所FIT再エネを高い比率での電気を一定期間一定価格で買い取る制度です。

しかし新電力は直接買うことができず、送配電事業者がいったん「高いFIT価格」で買い取り、新電力に市場価格で引き渡します。そのため、このFIT電気の仕入価格も、連動して高騰したのです。

このしくみは市場価格がFIT価格より安いということが前提でしたが、1月の市場価格高騰では、市場価格がFIT価格の「6倍」にもなりました。再エネ新電力は、その価格でFIT電気を引き取らねばならなかったのです。

再エネ新電力の中には、卸電力市場を全く使っていない会社もありました。それでもFIT電気の仕入れは市場価格で払うと決められていたので、「高い市場価格」を払わねばならなかったのです。これはフェアと言えるのでしょうか?

  • このままでは電力システム改革が終わってしまう!?

1月の市場価格高騰は、一部の新電力だけの問題でしょうか?大手電力の独占体制から、さまざまな新電力が競争するしくみへと変えて、誰でも自由に電気が売れる、わたしたち利用者は、好きな電気が選べるようにしようというのが「電力システム改革」です。

しかし、今でも発電と小売のシェアは大部分を大手電力が握っています。電力市場のシェアは4割程度、そこにも大手電力が半分くらい電気を売っています。

この大きな力の差がある中で、市場価格高騰が発生し、多くの新電力が打撃を受けました。新電力が倒産していくことになれば、大手電力による独占がさらに強くなります。

もしかしたら、原発と石炭火力をやめさせたいという利用者には、選択肢がなくなってしまうかもしれません。

わたしたちが自ら電気を選び、それによって日本が脱原発やエネルギーシフトに向かっていくためには、今、皆さんの大きな声が必要です!再エネ新電力だけではなく、市民からも声を伝えていきましょう。

(2021年5月、パワーシフト・キャンペーン運営委員会)