持続可能性は大丈夫なの? FIT認定にパーム油・パーム椰子種子殻(PKS)が増え、ルール見直しが議論されました

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2017年度、固定価格買取制度(FIT制度)のバイオマス発電の設備認定のうち、パーム油やパーム椰子種子殻(PKS)の割合が急増したことが大きな問題となりました。2017年9月末時点で固定価格買取制度の設備認定件数の約9割、合計出力の約8割にも上りました。

【図:2017年9月末までに認定された一般木材等バイオマスの専焼案件の内訳(合計出力1278万kW)】
(2017年11月21日 第32回調達価格等算定委員会資料より作成)
http://www.meti.go.jp/committee/chotatsu_kakaku/032_haifu.html

パーム油は、加工食品などに多用される植物油として急速に生産量が増加していますが、その原料であるアブラヤシの生産のために東南アジア等での大規模な森林伐採、大規模プランテーション造成が、住民が利用してきた土地を奪ってしまうなどの人権侵害、労働問題など大きな問題を引き起こしているケースが報告されています(*1)。

(写真:FoE Japan)

大量の炭素貯蔵地である泥炭地がプランテーションのために開発される場合、そこから発生する温室効果ガスによる気候変動影響も懸念されます。パーム油生産過程で出てくる種子殻(PKS)は、廃棄物利用とも言われますが、生産国でも燃料としての利用が可能なものを日本まで輸送するコストと燃料の無駄であるという点、またプランテーションがかかえる前述の問題もあり、FITという国民負担の制度を使って、大量のPKSを輸入し「再生可能エネルギー」として発電に使うことには疑問があります。

バイオマス発電にあたっては、持続可能性や気候変動防止の観点から、エネルギー効率向上のために発電に加え熱利用も併せた計画を推奨することや、燃料の調達先のトレーサビリティとその持続可能性の基準を設けること、大規模な木質バイオマス発電の買い取り価格を大幅に下げて安易な計画を防ぐことなどが求められます。

2017年度の調達価格算定委員会でも、持続可能でない燃料を使ったバイオマス発電については課題があるとされて、買取価格の引き下げや基準の制定が議論され、NGOなどからも意見が出されました(*2)。

その結果2018年度から入札制度を導入すること(液体燃料はすべて、液体燃料以外は1万kW以上)、既存案件を含めて燃料調達のトレーサビリティを確保し持続可能性の担保に努めること、FIT買取期間終了後も石炭火力に転換せずにバイオマス発電を継続することを確認すること、などが決まっています(*3)。

認定済案件についても適用されるため、実際に事業に移す際に持続可能な燃料調達が確保できずに変更・中止になる計画も出てくるかもしれません。

しかし、パーム油発電の禁止には至っていない、持続可能な燃料調達の難しい大規模案件の認定が制限されていないなど、問題はまだまだあります。パワーシフト・キャンペーンでも、引き続き注目していきます。

(写真:FoE Japan)

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*1 熱帯林行動ネットワーク/プランテーション・ウォッチ作成「パーム油調達ガイド」 http://palmoilguide.info/
FoE Japan「パーム油と森林」 http://www.foejapan.org/forest/palm/

*2 バイオマス産業社会ネットワークほか「再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)バイオマス発電に関する提言」2017年11月5日
http://www.npobin.net/FITTeigen171226.pdf

*3 調達価格等算定委員会「平成30年度以降の調達価格等に関する意見」について
http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/20180207001.html
また、FITの事業計画策定のためのガイドラインも2018年4月に改訂されています。
「再生可能エネルギー固定価格買取制度のガイドライン等」
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_legal.html#guide